【社説】沖縄県知事再選 辺野古移設の地元民意尊重を

沖縄県知事選が投開票され、野党勢力「オール沖縄」推薦の現職・玉城デニー氏が大差で再選された。米軍普天間基地の移設について玉城氏は「反対の民意が明らかになった」と表明した。しかし、普天間基地を抱える地元の宜野湾市と移設先の名護市では、移設「容認」を訴えた自民・公明推薦の佐喜真淳氏が得票数で玉城氏を上回ったのである。

地元では佐喜真票多数

佐喜真氏は前回に続く2度目の挑戦となったが、4年前にあいまいにした辺野古移設への姿勢について「容認」と明言して両市で多数票を得た。このことはまた、両市では、下地幹郎氏の出馬による保守分裂の影響や世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題の逆風は吹かなかったと言える。すなわち、知事の言う「反対の民意」は地元の民意とねじれを生じているのだ。知事は地元の民意を決して軽んじず尊重すべきである。

同日行われた沖縄の統一地方選でも、宜野湾市長選で移設「容認」派の市長が大差で再選され、同市議選では「容認」派が過半数を維持するなど玉城知事と正反対の意思が示された。名護市の市議選でも「容認」派の市長を支える与党が過半数を獲得した。

玉城知事は今後「反対の民意」をカードに使い、宿題でもある経済再建に向けた財源の確保のため国への要求を強める考えだろう。だが、知事は予算額に見合う成果を果たさねばならない。要求だけでなく地元の「民意」も踏まえ、国側とよく話し合い協力してもらいたい。

政府がいま、懸念しているのは、中国の台湾侵攻の可能性だ。中国は8月、弾道ミサイルを発射し沖縄の先島諸島に近い日本の排他的経済水域(EEZ)に落下させた。中国側は「法律的にも政治的にも道義的にも、日本は台湾問題についてとやかく言う権利はない」とし、日本の抗議を全く無視した。

台湾をめぐる情勢は緊迫の度を増している。「台湾有事は日本有事」である。その備えは日米同盟強化であり、辺野古への基地移設加速のはずだ。それなのに、玉城氏は眼前の脅威に真正面から対峙(たいじ)しようとしない。

2019年5月、漁船が尖閣諸島(石垣市)周辺海域を航行した際、中国公船に追い回されたことについて、知事は「中国公船が(尖閣諸島の)周辺海域をパトロールしていることもあるので、故意に刺激するようなことは控えなければならない」と述べたが、発言撤回に追い込まれた。中国主導の経済圏構想「一帯一路」にも「日本の出入り口として沖縄を活用してほしい」と語った。これらは親中姿勢の表れだと言える。

04年の国民保護法の成立を受け、沖縄県でも保護計画が策定され変更を重ねてきたが、不備が多い。これでは県民の生命と安全を守ることはできない。

抑止力と十分な準備を

知事に求めたいのは、台湾有事に備え保護計画の早急な再検討と離島島民の避難訓練の先頭に立つことだ。知事は選挙中「平和だからこその観光、教育だ」と強調したが、平和は抑止力を持ち十分な準備がなければ保障されないのである。