バイデン米大統領は、国際テロ組織アルカイダの最高指導者アイマン・ザワヒリ容疑者を殺害したと発表した。
この成果を地域の安定化につなげる必要がある。
米同時テロに深く関与
米当局はアフガニスタンの首都カブールで、ザワヒリ容疑者が建物のバルコニーに出たところをドローン攻撃で殺害した。米メディアは「中央情報局(CIA)による作戦」と報じている。バイデン氏は「このテロリストはもうこの世にいない。世界中の人々はもうこれ以上恐れる必要はない」と表明した。
ザワヒリ容疑者はアルカイダの初期からビンラディン容疑者が全幅の信頼を置いた最高幹部で、長年にわたってナンバー2として組織の拡大に貢献した。2001年9月の米同時テロにも深く関与し、11年5月の米軍特殊部隊によるビンラディン容疑者殺害後はアルカイダを率いてきた。
ザワヒリ容疑者が殺害されたことで、アルカイダは壊滅的打撃を受けた可能性がある。一方、殺害を口実にメンバーらが海外にある米国企業などを狙った攻撃を活発化させる恐れも指摘されている。米国は警戒を強めるべきだ。
バイデン氏は昨年8月末、アフガンから米軍を撤退させた。同年9月11日の同時テロ20年の節目に合わせてアフガン戦争を終結させるためだったが、イスラム主義組織タリバンが全土を掌握したことで、アフガンが再びテロの温床となることが懸念されている。今回のザワヒリ容疑者殺害で、バイデン氏は「アフガンが今後、テロリストの安住の地になることはない」と強調した。
だが、油断は禁物だ。タリバンは01年10月、同時テロを引き起こしたアルカイダをかくまっているとして米国の攻撃を受けたが、今回もザワヒリ容疑者の居場所をタリバン幹部が把握していたとされている。
アルカイダとタリバンとのつながりは要注意だ。公安調査庁は今年6月に公表した22年版「国際テロリズム要覧」でアルカイダについて、これまで服役や潜伏していたメンバーが復帰したり、外国人戦闘員が相当数加入したりすれば「対外テロ実行能力の回復につながり得る」と警戒感を示している。
国連アフガン支援団(UNAMA)が今年7月に公表した報告書によると、タリバン暫定政権は前政権や治安部隊の関係者ら160人の「超法規的処刑」を執行。報告書は女性の就労や教育の権利の侵害について、暫定政権の「最も顕著な側面」と批判した。
一方、タリバンと敵対する過激派組織「イスラム国」(IS)系武装勢力による攻撃で民間人700人が殺害され、1406人が負傷したと指摘している。こうした状況が続けば地域情勢の不安定化は避けられない。
米は中東で存在感高めよ
バイデン氏は7月、大統領就任後初めての中東歴訪でイスラエルやサウジアラビアなどを訪問した。
アフガン撤退で混乱を招いたことを反省し、中東地域の安定のために存在感を高めていく必要がある。



