【社説】参院選結果 期待される野党の不在が深刻

第26回参院選挙の結果が確定した。今回の改選124議席と神奈川選挙区の欠員1議席を補う計125議席のうち、自民党が63議席と過半数を獲得し、公明党は擁立した7選挙区の候補者全員の当選と比例区で6議席を得て13議席を確保。非改選と合わせ連立与党は参院で146の安定多数を得る大勝だった。

投票率は依然低水準

今回の参院選の投票率は52・05%で、戦後2番目に低かった前回の48・8%を上回ったものの、依然として低水準である。選挙終盤の遊説先で起きた安倍晋三元首相の銃撃死亡事件の衝撃を踏まえると、弔い合戦として自民党支持層の投票行動を増やしたとみられるが、それでも全体の投票率は低かった。

このことは、期待できる野党が現れていないことを意味していると言えよう。その深刻度の深まりは、今回の野党の獲得議席数が、立憲民主党17議席、日本維新の会12議席、国民民主党5議席、共産党4議席、れいわ新選組3議席、NHK党1議席、社民党1議席、参政党1議席に終わり、野党がますます小党分裂傾向になっていることから見て取れる。

与党支持者が多く投票所に足を運び、対する野党各党の支持者の動きは鈍くなっている。政権は安定するかもしれないが、政治に緊張感をもたらして政界の空気を刷新し、状況によっては政権交代を果たすのが野党の役割だ。その期待が失われていることは健全な政治の姿とは言えないだろう。

参院選の投票率で戦後最低を記録したのは1995年の44・52%で、それまで長らく与野党対決を演じてきた自民党と社会党が連立を組んだ社会党首班の村山政権の時だった。双方の支持者の期待に反した連立のため、投票率は急落した。

しかし、98年に自民党と対峙(たいじ)する新たな野党勢力として民主党が結党し、同年参院選では投票率は14・32ポイントも上昇する58・84%に回復したのである。以後、民主党政権時までの期間の参院選投票率は55%以上で推移していた。与党と野党、それぞれが期待を集めなければ投票率は上昇しない。

ところが政権を失った民主党が分裂を重ねた結果、1人区で共産党を加えた候補者調整を行う野党共闘が2016年参院選で注目されたものの、投票率を急上昇させるほどの結果にはならなかった。立民、共産の野党共闘は、昨年の衆院選に続いて今回も議席を減らしており、信任を失っている。

特に、共産は比例で約361万票と最低レベルだった。政見の似通ったれいわに共産票が流れた可能性もあろう。

維新は責任野党結集を

一方、野党で躍進したのは6議席から12議席へ倍増した維新だが、選挙区では4議席と振るわなかった。選挙区で10議席の立民の後塵(こうじん)を拝しており、特に定数6の東京選挙区で次点に泣くなど、全国政党化への挑戦には課題を残している。

だが比例区では784万票を取り、約677万票の立民に100万票以上の差をつけて野党第1党となった。今後、期待される野党勢力を結集する役割を担ってほしい。