【社説】NATO首脳会議/露のウクライナ侵略は失敗

NATO首脳会議で記念撮影に臨むNATO加盟国の首脳ら=6月29日、スペイン(UPI)  

北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議がマドリードで開かれ、北欧のフィンランドとスウェーデンの加盟申請を承認することで合意した。
 

ロシアのプーチン大統領はウクライナのNATO加盟を阻止するために侵略を開始した。しかし、このことがロシアの脅威にさらされる北欧2カ国の加盟申請につながった。結果的にNATO拡大を招いた侵略は、戦略的失敗だと言うほかはない。

北欧2カ国が加盟へ

北欧2カ国の加盟をめぐっては、両国の「テロ組織支援」などを理由に反対していたトルコが支持に転じて実現する運びとなった。冷戦中も軍事的な中立政策を保ってきた北欧2カ国にとっては、安全保障政策の大きな転換点だと言える。

特にフィンランドはロシアと1300㌔以上にわたって国境を接しており、加盟によってNATOの対露圧力が強まることになる。戦略的に重要な欧州北部のバルト海も、加盟国に囲まれた「NATOの湖」(英BBC放送)と化す。ロシアにとっては大きな痛手だろう。

今回の首脳会議では、12年ぶりに改定した行動指針「戦略概念」でロシア・中国への対抗姿勢を鮮明にした。2010年策定の戦略概念では、ロシアを「戦略的パートナー」と位置付けていたが、新戦略では「最大かつ直接的な脅威」に変化。12年前の戦略で全く言及がなかった中国については、その野心や威圧的政策を米欧安保への「挑戦」と見なした。

会議には日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの4カ国が「アジア太平洋パートナー国」として招かれ、民主主義陣営と中露の権威主義体制の対立構図が浮き彫りとなった。岸田文雄首相は日本の首相として初めて出席。先進7カ国首脳会議(G7サミット)でも中国に対する危機認識の共有を図ってきた首相は「欧州とインド太平洋の安全保障は切り離せない」と指摘し、NATOとの協力強化を進める方針を表明した。

ロシアのウクライナ侵略や中国による南シナ海の軍事拠点化などは、力による一方的な現状変更の試みであり、明白な国際法違反である。日本とNATOは国際秩序を揺るがす暴挙に結束して対抗すべきだ。

中露両国は日本に対する圧力も強めている。昨年10月には日本を半周する形で中露軍艦艇が航行したほか、今年5月に東京で日米豪印4カ国の枠組み「クアッド」の首脳会議が開かれた際には、中露の戦略爆撃機が日本海と東シナ海の上空を飛行するなどの挑発を行った。

中国は一方的に領有権を主張する沖縄県・尖閣諸島の奪取を狙い、ロシアは北海道への野心をのぞかせている。日本がNATOとの関係を強化した意義は大きい。

重要な日米韓の連携強化

首相は会議に合わせてバイデン米大統領、韓国の尹錫悦大統領と3カ国首脳会談を行い、核・ミサイル開発を進める北朝鮮や中国を念頭に3カ国の安保協力推進を確認した。

東アジアの平和を守る上で日米韓の連携強化は極めて重要である。今後も抑止力向上に努める必要がある。