新型コロナウイルスの水際対策で停止していた訪日観光客の受け入れが再開された。約2年間訪日客がなく、厳しい状況に置かれていた旅行業界の期待は大きい。折からの円安を味方に付けⅤ字回復を図る時だ。
添乗員付き団体旅行のみ
今回受け入れるのは、ウイルス流入リスクに基づき「青」「黄」「赤」の三つに分類した国のうち最もリスクの低い「青」の国で、米国、中国、韓国、台湾、オーストラリアなど98カ国・地域。個人旅行は認められず、添乗員付きの団体ツアーに限られる。また、1日当たり2万人の上限付きだ。
観光客が実際に到着するのは約2週間後とみられるが、松野博一官房長官は「予約順調との報道もあり、地域経済活性化を期待している」と語った。
日本観光へのニーズはもともと高く、世界経済フォーラムが発表した2021年の旅行・観光の魅力度ランキングでも日本は1位となっている。現在の円安も追い風になる。
そのような好機到来を逃さないためにも、1日当たり2万人の上限は撤廃すべきだ。業界側からの要請を受け、3万人に増やすことを検討中とも伝えられるが、コロナ以前には1日平均14万人の訪日客があった。それに比べればあまりに少ない。
先進国の中でこのような入国制限の例はない。海外メディアから入国拒否を「鎖国」と批判され、ようやくインバウンドを再開した日本だが、2万人の制限付きでは本当の開国にはならない。検疫態勢が許す限りの入国者を受け入れるべきだ。
政府が入国制限を設けているのは、コロナ感染者の流入を警戒するためである。しかし、受け入れ対象国と日本の感染状況を比べれば、それが感染拡大を引き起こす可能性は低い。
一番警戒しなければならないのは、新しい変異株の出現だ。この場合は、受け入れ対象国の見直しも必要である。素早く柔軟に対応できるよう、いまのうちに準備しておく必要がある。
また入国時の検査も免除されているため、入国寸前に感染した場合などそのまま入国してしまうケースも考えられる。感染者が出た場合の備えも必要だ。政府は外国人観光客の入国再開に当たり、「ガイドライン」を公表。旅行会社にマスク着用や「3密」回避の必要性を訪日客に説明し、事前に同意を得ることを求めている。
ただマスク着用については、政府が「見解」を示して以降も屋外での着用を続けるなど、過剰な傾向がわれわれ日本人にあることを自覚しておく必要がある。概してマスク着用を好まない傾向が強い外国人に政府の「見解」を正確に伝え、着用に関する誤解で余計な摩擦が起きないようにしたい。「おもてなし」の国の真価が問われる。
新しいニーズに対応を
22年版観光白書によると、世界的な傾向として環境に配慮しつつ自然や文化を楽しむ「持続可能な観光」が重視されつつある。地方にはそのような観光資源がたくさんある。
訪日観光再開を活性化の起爆剤とするため、地方は新しいニーズに対応した受け入れ態勢を整える必要がある。



