【社説】北のミサイル 日本は早急に反撃能力保有を

17日、韓国ソウルの駅構内で、北朝鮮によるミサイル発射のニュースを見る男性(AFP時事)

北朝鮮は、首都平壌の順安付近など複数の地点から短距離弾道ミサイルを日本海に向けて発射した。韓国軍の発表では4地点から8発を発射。日本政府も3カ所以上から少なくとも6発が発射されたことを探知した。今年に入り17回目の発射で、1回のミサイル発射としては過去最多となる。

多数を同時に連続発射

北朝鮮は、米本土にも届く射程の長い大陸間弾道ミサイル(ICBM)をはじめ、主に日本など周辺諸国への攻撃を想定した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、さらに韓国を狙う短距離弾道ミサイルなど目的の異なる各種ミサイルの開発・配備を急ピッチで進めている。

また今回のように、移動式発射台(TEL)からミサイルを発射するケースが増えている。発射後、低高度を飛翔したり、飛行軌道を変えたりすることができる変則軌道型のミサイルや極超音速ミサイルも登場させている。こうしたミサイルはレーダー探知が難しく、現行のミサイル防衛システムでは十分に対応できない恐れがある。

しかも今回、北朝鮮は多数のミサイルを同時に連続発射させた。ミサイル防衛システムの同時対処能力を超える攻撃力を保持していることを誇示する狙いがあるものとみられ、北朝鮮の脅威は一段と高まっている。

北朝鮮が近々7回目の核実験を強行するのではないかとの見方も出ている。ウクライナとの戦争でロシアによる核兵器使用の危険性が指摘される中、核の脅威を誇示し、北朝鮮が日米韓3カ国に揺さぶりをかけてくる事態にも備えねばならない。

こうした厳しい状況の中、北朝鮮の挑発行動に歯止めをかけるべき立場の国連は、中露の拒否権行使でミサイル発射に対する北朝鮮制裁決議案が安保理で否決される事態に陥っている。国連に期待が持てぬ以上、北朝鮮の脅威に対処するには、ミサイル防衛体制の強化に加え、国防政策の見直し作業を急ぐとともに、防衛費の大幅な増額に踏み切り、早急に反撃能力を自衛隊に付与せねばならない。

さらに、核の共有に関する議論も避けて通るべきではない。日本は欧州と戦略環境が異なるため、ドイツやイタリアのように国土を荒廃させる危険の高い戦術核兵器の導入よりも、例えばSLBMの日米共同運用に道を開き、北朝鮮に対する報復抑止力を保持することなども日本の取るべき選択肢の一つとして検討を始める時期に来ている。

また、日米韓の関係強化も重要だ。韓国の尹錫悦政権は、文在寅前政権とは異なり、日米韓による安全保障協力を進め、強い態度で北朝鮮に臨む姿勢を打ち出している。先の日米、米韓の首脳会談でも、北朝鮮の完全な非核化に向けて日米韓連携の重要性が強調された。

 日韓防衛協力を立て直せ

今月シンガポールで開かれる「アジア安全保障会議」に合わせ、約2年半ぶりに日米韓の防衛相会談を開催する方向で調整が進められている。北朝鮮の脅威に対処するため、日本は米国との連携を深めるとともに、文前政権の下で停止状態に陥った日韓の防衛協力体制を急ぎ立て直す必要がある。