パレンバンの史実と出光佐三の軌跡 国家の命運を決するエネルギー問題 「空の神兵」顕彰会会長 奥本 康大氏

国守った落下傘の「神兵」たち 戦後経済支えた愛国者 出光 エネルギー他国依存は孤立招く

その思想の原点は、世界全体を家族のようにする「八紘為宇(はっこういう)」、七度生まれ変わっても国に忠誠を尽くす「七生報国」といった本当の日本人らしい世界観であり、事業経営の基軸にもしていた。また、より良い商品を安く提供しようという消費者本位の観点により、創業当初から品質重視の商品開発にも力を入れていた。

日本精神が戦後歴史の中で廃れていってしまうことにも強い危機感を持っていた。そのため、戦前の皇国史観の第一人者だった研究者に研究室を提供したり、シベリア抑留から帰国した陸軍軍人を出光の嘱託に迎えて支援するなど、日本精神の伝承に骨身を惜しまなかった。

終戦後は南方や満州などの海外資産をすべて失い、現在で換算すると約500億円の借金が残された。だが、当時60歳の出光佐三は玉音放送を聞いて、「これから日本を再建するために頑張ろうと仰っている」と汲(く)み取った。社員への訓示でも「愚痴を止めよ」「世界無比の三千年の歴史を見直せ」「そして今から建設にかかれ」と呼び掛け、さらなる飛躍を決意。約1000人の社員を抱えていたが、大家族主義を徹底して一人も首を切ることはしなかった。

当時は占領軍が石油をすべて掌握しており、石油業に復帰できない中、ラジオ修理業、農業、漁業、印刷業などいろんな商売をやった。タンク底の石油回収作業も行っており、こうして信用を培いながら石油業界に復帰していった。

だが、米国は質の悪い石油を高く売り付けており、これでは戦後復興ができないと、出光は借金で大型タンカー「日章丸」(二代目)を建設。世界各地へと石油の買い付けに行き、英国からの独立宣言をした産油国のイランにも派遣された。英国から経済封鎖を受けていたイランからは大歓迎だった。英国の石油会社は出光の購入した石油の所有権を主張したが、当時の日本の裁判官は申請を却下した。

欧州が中東から石油を購入する場合、どうしてもスエズ運河を通るため、巨大なタンカーが通れない。どうしても日本とは石油の価格に差が出てくる。そのコスト差から日本は欧州と電化製品などの製品競争ができるようになった。出光佐三がタンカーの大型化を進めたことが、日本の高度経済成長のきっかけをつくったとも言われている。

現在、国内のエネルギー問題を見ると、無駄なことも多い。国策上、分散化する必要もあるだろう。原発を再評価して稼働率を高めなければいけない。エネルギーをほかの国に頼るのはウクライナを見ても分かるが、有事の際に孤立してしまう。いかにエネルギー自給率を高めるか見直しすべきだ。

おくもと・こうだい 1950年9月大阪府生まれ。現役時代は出光興産に勤務。現在は保護司、調停委員として社会貢献に従事。「空の神兵」顕彰会を主宰し、正しい戦争の歴史を後世に伝えるべく講演会、勉強会の開催ならびに慰霊碑、顕彰碑、記念碑の建立活動に取り組んでいる。史実を世界に発信する会委員、二宮報徳会理事、新しい歴史教科書をつくる会千葉支部幹事。