【特別寄稿】安倍氏は歴史に残る指導者 反共・自由訴え中国を封じ込め 元米下院議長 ニュート・ギングリッチ

米議会上下両院合同会議でスタンディングオベーションを受ける安倍晋三首相=2015年4月29日、ワシントン(AFP時事)

15年4月29日の米上下両院合同会議演説で述懐したように、初めて米国を体験したのは、学生時代にカリフォルニア州に行ったときだ。ある女性が安倍氏を自宅に温かく迎え入れ、米国の学校に通えるようにしてくれた。その女性は料理が得意で、いつも家に人が立ち寄っていたそうだ。若き日の安倍氏は、この地域社会の交流に心を動かされた。

米議会演説ではこう語っている。「その人たちがなんと多様なこと。『アメリカは、すごい国だ』。驚いたものです。のち、鉄鋼メーカーに就職した私は、ニューヨーク勤務の機会を与えられました。上下関係にとらわれない実力主義。地位や長幼の差に関わりなく意見を戦わせ、正しい見方なら躊躇(ちゅうちょ)なく採用する。――この文化に毒されたのか…」

安倍氏はさらに、米国に対する信念は、この個人的な体験よりはるかに深いところにあると述べている。「民主政治の基礎を、日本人は、近代化を始めてこの方、ゲティスバーグ演説の有名な一節に求めてきたからです。農民大工の息子が大統領になれる――、そういう国があることは、19世紀後半の日本を、民主主義に開眼させました。日本にとって、アメリカとの出会いとは、すなわち民主主義との遭遇でした。出会いは150年以上前にさかのぼり、年季を経ています」

演説のタイトルは「希望の同盟へ」だった。

暗殺後、反安倍勢力は、この希望的で、反共産主義的で、自由で、信教の自由を守る未来を破壊しようとしている。

敵対勢力や安倍氏の功績をねたむ人々は、最も長く在職した首相の死を悼むどころか、安倍氏の記憶に傷を付け、支持者らを政治から追放しようとしている。日本が共産中国や共産北朝鮮と異なるのは、信教の自由があるからだ。その信教の自由をも破壊しようとしている。

日本の左派系メディアもこれに加担した。安倍氏のレガシー(遺産)を傷つけ、歪(ゆが)め、支持者や友人を公の場から追い出そうとしている。

日本の政治でこれほどのヒステリーと悪意が見られたのは、1930年代以来、初めてのことだ。

希望の同盟への訴えが、信教の自由を破壊し、反対する者を中傷し、市民を公の場から追い出そうとする動きに取って代わられたことは、大きな悲劇だ。

安倍元首相は、長く仕えたこの国からもっと温かく見送られるにふさわしい人物だ。