
先進7カ国(G7)サミットに招待されて広島入りしている韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は21日にも、岸田文雄首相とともに「韓国人原爆被害者慰霊碑」を参拝する。現職の日本の首相が参拝するのは、1999年の小渕恵三首相以来2人目となる。
両首脳による同慰霊碑の参拝を誰よりも歓迎する人物は、広島市在住の利光松夫さん(76)だ。2006年から15年もの間、毎日、慰霊碑を掃除してきた。建設作業員だった利光さんは2004年、事故で足を大怪我し、不自由の身となったが、広島で原爆の犠牲になった多くの韓国人を慰霊したいという気持ちで、雨の日も風の日も欠かさずボランティアで清掃を行った。駐広島韓国総領事館は17年、利光さんの奉仕精神をたたえ、感謝状と記念品を贈呈した。
原爆ドームなど平和記念公園内を案内する平和ガイドは約600人いるとされるが、利光さんを知らない人はいないという。ガイドの一人は、「体が不自由ながら、落ち葉1枚1枚丁寧に手で拾い集める姿には感動する」と話した。
利光さんは足腰の状態がさらに悪化し、自転車に乗ることもままならなくなり、21年に毎日の清掃活動の継続を断念。利光さんのボランティア活動に感銘を受けた地元のハングル教室の講師や生徒7人が交代で毎日、清掃活動を行い、利光さんの精神を引き継いでいる。
慰霊碑は1970年、地元の在日韓国人団体・民団広島県本部が中心に建てた。当初は平和記念公園の敷地外にあったが、「公園内にあるべきだ」という声が地元から上がり、99年に園内に移された。広島に落とされた原爆で犠牲になった14万人のうち、韓国人は約2万人いるとされる。 (広島サミット取材班)



