事務所主役は地元支援者
「当選、これまで以上の重み」
今回の選挙で、家庭連合会員であることを公表した美馬氏を有権者はどう審判するのか、マスコミも注目した。NHKは東京から特集担当のディレクターを派遣、出陣式から投開票日前後、ほぼ密着に近い取材を行った。共同通信も取材するなど、美馬市議の選挙では初めてのことだった。

選挙戦では、懸案事項である市中心部の再開発問題や音楽ホールの建設と共に、持論である「個人偏重から家庭尊重へ」を訴えた。「確かに逆風はあったものの、私の政治的な主張は、保守的な有権者にはきちんと届き受け入れられているとの感触を持った」と美馬氏は振り返る。
今回美馬氏は約2000票を獲得したが、そのうち美馬氏が所属する家庭連合関係の票は500票ほどという。あと4分の3の約1500票はそれ以外の有権者の票だ。もともと美馬家は、徳島を代表する名家の一つで、美馬氏の曽祖父の儀一氏は、阿波銀行の前身である阿波商業銀行の初代頭取を務めた。世話好きでもあった父の準一氏(昨年死去)に恩義を感じている人も多いという。それらに加え、同窓会や佐古体育協会会長など美馬氏が役職を務めてきた地域の、さまざまな団体の人脈が大きかった。こういった人との繋(つな)がりを育ててきた美馬氏の努力と率直で鷹揚(おうよう)な人柄も大いにあずかっているようだ。
選挙運動は、後援会事務長で家庭連合会員である今井昇氏(80)が、「サポーターズクラブ」の代表となり、電話作戦にも同連合の会員が精力的に働いた。旧統一教会たたきの逆風でこれまで以上に結束を固めたようだ。
家庭連合のメンバーの献身的な戦いは、美馬陣営にとって大きな力であることは確かである。しかし、選挙事務所の主役はあくまで地元の支持者たちだ。そこには、さまざまな人が出入りし、地域のサロンの雰囲気を漂わせる。
選挙戦の最終日、こんなことがあった。事務所のソファに座って談笑する支援者たちに何気なく「ところで家庭連合の関係の方はどなたですか」と聞いたところ、ある女性運動員が「家庭連合だとか、そんなこと関係ありません。ここには美馬先生を勝たせたいという人が集まっているんです」と不快さを露(あら)わに語った。
この女性運動員は家庭連合とは別の宗教団体に所属しているが、熱心な美馬氏の支援者だ。最終日には選挙カーのウグイス嬢も務めた。美馬氏を支援する人がどういう人たちかを象徴する場面だった。
美馬氏の支援者は、キリスト教系の山野氏をはじめ、さまざまな宗教の人々から成っている。選挙事務所開きは、美馬氏が氏子総代を務める椎宮八幡神社の宮司が務めた。最終日夕の最後の時間を、美馬陣営は地元の椎宮神社周辺を丁寧に回った。美馬氏の地道な活動による地域との絆は、逆風にも揺るがなかった。

7選を果たした翌日、徳島市役所の自民党議員団の控室に美馬市議を訪ねた。10分置きくらいに携帯にかかってくるお祝いの電話に出ながら、美馬氏は改めて今回の選挙を振り返った。そして最後に「家庭連合会員であることも含めて、それまでの自分の全てが、審判されるような厳粛な選挙だった。そういう意味でこれまでの選挙とは違う重みを感じている。支援してくださった皆さんへの恩返しのためにも、徳島市のため、地域のためにこれまで以上に頑張りたい」と声に力を込めた。



