「長谷川等伯展~水墨の美技と、一門の俊英と~」

名作27点紹介 その画業に迫る

JR七尾駅前に立つ長谷川等伯像

水墨画こそ我が「画道」の信念

旺盛な制作続けた弟子たち

能登七尾出身で桃山時代に活躍した絵師・長谷川等伯(1539~1610年)を顕彰する「長谷川等伯展~水墨の美技と、一門の俊英と~」が、今月29日から石川県七尾市の七尾美術館で開催される。

同館では郷里が生んだ巨匠を開館以来の重要テーマと定め、等伯とその一門「長谷川派」の絵師たちの作品や人となりを紹介してきた。今年で28回目を迎え、「等伯の水墨画」と「長谷川一門の絵師たち」に焦点を当てている。

等伯は水墨画でも卓越した腕を振るい、ことに50歳ごろ以降は国宝「松林図屏風」など、数多くの名作を描いた。また生涯を通じて、その周囲には常に一門の絵師たちが存在し、彼らは持てる力を結集して制作活動に取り組んでいた。

同展では若年期から60歳ごろまでの水墨画や、「長谷川派」絵師たちによる多彩な各種作品など、3テーマで名作の数々合わせて27点を紹介し、等伯や「長谷川派」絵師たちの画業に迫る。

まず、《テーマ1》の「源流-能登長谷川四代」では、幼少時の等伯が養子に入ったと伝わる長谷川家は、七尾城下に居を構え染物業と絵仏師を生業(なりわい)としていた。

現存作品からは、同家には等伯のほかに養父の宗清(1507~71年)や養祖父との説もある無分(生没年不詳)、そして等伯京都移住後に家業を継承した一族とも目される等誉(?~1636年)といった、ゆかりの絵師たちの存在が窺(うかが)われる。ここでは彼ら「能登の長谷川派」絵師たち4人の作品にスポットを当てた。

《テーマ2》の「雄輝-等伯の水墨世界」では、若年時は鮮やかな彩色による仏画などを数多く制作した等伯だが、後年ほど水墨画の増加傾向がみられる。

そこには等伯にとって、自らが追求する「画道」には水墨画こそふさわしい、という信念があったからなのではないか、という。そのためか50~60歳代にはいずれも代表作というべき、国宝の「松林図屏風」はじめ、名だたる水墨画の傑作を数多く描いている。等伯の水墨画に着目し、若年期より60歳代ごろまでの作品を紹介する。また、同館所蔵の「複製松林図屏風」も展示される。

《テーマ3》の「広範-長谷川派の展開」では、絵師集団「長谷川派」を率いた等伯の周辺には、いずれも絵師となった4人の息子をはじめ数多くの弟子たちが活躍していた。

資料が少なく、彼らの足取りははっきりしないが、伝来する多彩な作品群からすると、等伯没後も彼らは一定の勢力を保持し、等伯ゆずりの画技を以(もっ)て広範かつ旺盛な制作活動を繰り広げていたようだ。ここでは「長谷川派」絵師たちが手掛けた作品を展示。

なお、館内の「ハイビジョンコーナー」では、等伯の作品を年代ごとに収録した番組や、富山県高岡市・大法寺所蔵の長谷川等伯(信春)筆「三十番神図」など4点の内1点の複製作品を随時鑑賞できる。

関連イベントとして、5月14日午後2時から北春千代館長による特別講演会「壮年時代の長谷川等伯」(聴講無料)が同館アートホールで開催される。

同展は4月29日から5月28日まで(会期中無休)。問い合わせは(電)0767(53)1500。

(日下一彦、写真も)