企画展「ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―」

陶器や金工 新作約70点

人間国宝から若手20人のアーティストが挑む

「ポケモンと工芸、正面切って出会わせたとしたらどんな『かがく反応』が起きるだろう」。この問いに、人間国宝から若手まで20人のアーティストが挑んだのが、現在、金沢市の国立工芸館で開催中の「ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―」。陶器や金工、ガラスなど工芸の各分野で活躍する人間国宝から若手のアーティストまで、20人が手掛けた新作約70点を展示。春休みと重なり、連日多数の家族連れが訪れている。

解説文によると、「一見意外な組み合わせですが、案外この2者、共通項が少なくないのです。たとえば工芸の原材料や製造工程のエネルギーを挙げてみれば土や草や金属や、水に炎に電気など、そのままポケモンのタイプといっても通用するかのよう。さらにはわざを磨いたり、育てたり、収集や交換といったシステムも工芸にかける作り手や愛好者の想いと重なるところが多そう」と、その共通性を説明している。

作品はポケモンの姿かたちからしぐさ、気配までを呼び起こしたもの、進化や通信、旅の舞台、効果抜群のわざなどゲームの記憶をたどるもの。そして日々を彩る器、着物や帯留めなど粋な装いに誘い込まれたポケモンたちなど、作者の思い思いの世界に誘っている。

「会場で皆さんを待ち構える作品との出会いははたして…ワクワク、うっとり、ニヤニヤそれともゾクッ?、かけ算パワーで増幅した美とわざの発見をお楽しみください」と誘っている。

何点か見ていくと、陶芸家の今井完眞さんの「フシギバナ」は、そのキャラクターを題材に、土で変温動物のようなしっとりした肌感を生み出し、迫力のある仕上がりだ。どっしりした質感が伝わってくる。

このほか、無数の「ピカチュウ」がデザインされた布のレースや、ゲームの舞台をイメージしたガラス作品など、各作家の個性豊かで多彩な作品が展示されている。

唐澤昌宏館長は「世界中で広く支持される『ポケモン』を通して、工芸のすごさや奥深さを多くの人に感じてほしい」と話している。

また、主任研究員の今井陽子さんは「ポケモンと工芸のかけ算パワーで増幅した美とわざを、見て、感じて、探究するこの企画です。まずは『きれい!すごい!』と直感的に楽しみながら、ポケモンと工芸の魅力と可能性をご堪能ください」と勧めている。会期は6月11日(日)まで。

(日下一彦)