春に開花するユキツバキの園 雪椿発見の地/新潟県阿賀町

日本列島の気候的特性は、中央の山岳地帯によって日本海側と太平洋側とに分けられるために、植物もそれに適応して分化した。そのため近縁でありながらも性質が異なる植物が多数見られる。

太平洋側のアオキ、モチノキ、ユズリハは、それぞれ日本海側ではヒメアオキ、ヒメモチ、エゾユズリハとなる。

日本海側のユキツバキと太平洋側のヤブツバキもその一例だ。ヤブツバキは高木性だが、ユキツバキは冬の積雪のため根元から小枝を張る低木性。枝が折れないように倒伏(とうふく)する。

新潟県阿賀町の麒麟山(きりんざん)は「雪椿発見の地」。明治39年3月、地元の農林学校教員の高橋輿平が、教頭の丸山忠次郎とともに麒麟山に出掛けたところ、1株のツバキの花を見つけて観察した。

2人は、花の雌雄(しゆう)ずいがヤブツバキと異なることから変種だと思い、東大の牧野富太郎に標本を送ったところ、牧野は「雪椿」と命名。ヤブツバキの花糸は白で、鋸葉(のこぎりば)が鈍いのに対し、ユキツバキの花糸は黄色で、鋸葉は鋭い。

それを発見した場所が麒麟山温泉だ。宿が道沿いに数軒ある小さな温泉。そこは麒麟山の北東麓で、北側を阿賀野川が東から西に流れ、川と麒麟山とが構成する景観が素晴らしい。その山裾の「せなかじ岩」という切り立った岩の下に、「雪椿発見の地」の碑(いしぶみ)がある。近くにはユキツバキ園もあって群生を見ることができる。

花が咲くのは雪が解けて、倒れた枝が立ち上がってからの頃。春が来るとおびただしい数の花を咲かせる。

(増子耕一、写真も)