湯沢凧同好会・会長小野育朗さん

「お正月には凧(たこ)あげて」と唱歌に出てくる「凧」だが、湯沢凧同好会会長の小野育朗(いくろう)さんは凧を自作し普及活動もしている。今春3月19日には3年ぶりに、秋田県湯沢市B&G海洋センター前広場で、第66回湯沢市凧あげ大会を予定している。
「去年と一昨年はコロナのため中止した。全国から凧あげをやらないかと電話がくる。今年は開きます」
第1回大会が開かれたのは昭和33年。小野さんは小学校2年生の時、第2回大会から参加し凧の魅力に取りつかれた。竹ひごを削り和紙を張り絵も描く。趣味が高じて自宅に「湯沢凧春風館」を造り、県内外の和凧を収集・保存している。壁から天井まで200点以上を飾る。
先日、秋田市で開かれた「工芸エキスポ」では全国から来た伝統工芸品の愛好家に湯沢凧を紹介した。湯沢凧は昭和39年に市の有形民俗文化財に指定されている。
湯沢凧は、京都警護のために上洛した佐竹藩の武士たちが都の錦絵を写し取ってきたのが起源とされ、約300年の歴史がある。
また同じ頃ツツガムシ退治を祈願するために描いた鬼女の顔絵を雄物川沿いに立て、それが「まなぐ凧」(「まなぐ」は目玉を指す)の原画とされる。小野さんは、大会にコロナ退散の願いも込める。
「まなぐ凧」は左右対称で毛筆の一筆書きだが、眉毛が同心円状に描かれているなど技術的には難しい。「武者絵凧」「歌舞伎絵」と共に湯沢凧の代表的な図柄である。
小野さんのもとには画帳が70種類ほどある。中でも源平合戦の平敦盛(あつもり)と熊谷次郎直実(なおざね)、五条大橋の牛若丸と弁慶の絵が好評だ。赤、緑、黄、紫など極彩色を使い、槍(やり)や巻物などを持った手を画面に入れるのも湯沢凧の特徴。
骨組みの構造が単純で、縦の骨が中央に1本、横骨は3本が基本で、凧が大きくなっても横骨が増えるだけ。縦骨と横骨の交点につり糸を付けるだけで「シッポ」を付けないため、左右の回転や急降下など凧を自在に動かす面白味が出てくる。
一番上の横骨の弦(つる)に付けた紙(ビンビン)がブーンとかビー、キューンなど高低強弱さまざまな音色を奏でるのも魅力だ。
「日本の凧の会」の「凧揚げカレンダー」を見ると、全国のどこかで毎週のように大会が開かれている。地元の保存会の方に歴史や絵柄を聞くのも楽しい。
(伊藤志郎、写真も)



