通りが「ギャラリー」に変身 富山県高岡市の「山町筋の天神様祭」

菅原道真の掛け軸や人形を飾り

富山県高岡市の「山町筋の天神様祭」

学問の神様として親しまれている菅原道真を祀(まつ)る“天神信仰”が盛んな富山県高岡市で、今月21日(土)、22日(日)、恒例の「山町筋の天神様祭」が開かれる。高岡では長男が生まれると、最初のお正月に母方の実家が初孫の無病息災や学業成就を祈念して、天神様の掛け軸や彫刻を贈る仕来りで、それは現在も脈々と受け継がれている。

市の中心部の山町筋(やまちょうすじ)一帯では、国重要文化財の菅野家や大田家住宅をはじめ、通りに面した約30カ所が会場になり、各商家が大切に保存してきた掛け軸や木像、版画など約120点を店先や座敷に飾り、「まち並みギャラリー」に変身する。お正月に天神様を飾るのは、主に北陸地方に残る珍しい風習とされる。天神様祭は地域の活性化を目指して、平成4年に発足した「土蔵造りのある山町筋まちづくり協議会」が同14年から始めた。今年で22回を数える。

通りの一角にある「高岡市土蔵造りのまち資料館」は、山町筋で母屋内部を一通り見学できる唯一の施設で、外観とは異なり、内部には数寄屋風のザシキやブツマ、縁側があり、2階から整備された中庭の景色が楽しめる。もともと昭和20年まで綿糸や綿布の卸売業を手広く営んでいた商家・室崎家で、母屋は東西道路に北面して建ち、その後方には中庭を挟んで土蔵が建っている。

見学した折、床の間に置かれた天神像を熱心に見入る年配のご婦人の姿があり、聞くと、子供の頃にこのかいわいに住み、この天神像を見せてもらったと懐かしそうに話していた。年月を重ねるにつれ、それぞれの思いが積み上げられているようだ。

山町筋は主に旧北陸道に面した御馬出(おんまだし)町・守山町・木舟町・小馬出(こんまだし)町からなり、高岡を支えた商人の町として栄えてきた。JR高岡駅の北西に位置し、歴史的な町並みが残っている。平成12年に国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。

土蔵造りの町並みがきれいに保存されているが、それには理由がある。明治33年(1900年)の高岡大火で一帯の商家が全焼し、その教訓から火災に強い土蔵造りの家を次々と建築した。東西約500㍍、面積5・5㍍の区域で、かつては100棟余の伝統的建造物が軒を連ねていた。時代の変化とともに壊され、近年は空き地が目立っているが、伝統的建造物群保存地区に相応しい落ち着きと風情が漂っている。

(日下一彦、写真も)