災厄を祓い、安寧な暮らしを祈願

災厄を祓(はら)い、安寧な暮らしを祈願したわが国の民俗芸能「風流踊(ふりゅうおどり)」が11月末、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産へ登録された。対象となったのは24都府県の計41件。日本3大盆踊りの「郡上踊(ぐじょうおどり)」(岐阜)や「西馬音内(にしもない)の盆踊」(秋田)など、地域の歴史や風土を反映した祈りが込められたもので、いずれも国の重要無形民俗文化財に指定されているが、その価値が国際的に認められた意義は大きい。
風流踊または風流(ふりゅう)は、室町時代に流行し、趣向を凝らして人目を奪う美意識(風流)の代表的表現として始まった。華やかな衣装で着飾り、または仮装を身に着けて、鉦(かね)・太鼓・笛など囃(はや)しものの器楽演奏や小唄(こうた)に合わせて人々が群舞する。
庶民の暮らしが育んだ芸能文化であり、疫神(えきじん)祭や、念仏、田楽などに起源をもつ芸能と考えられている。また、念仏踊や盆踊り、雨乞踊(あまごいおどり)、虫送り、太鼓踊、剣舞(けんばい)、仏舞、花笠踊、祭礼囃子(はやし)、三匹獅子舞など、多くの民俗芸能、民俗行事の源流となったといわれている。江戸時代に入って、固定化された踊りとして各地の農村に定着した。
ユネスコは各地の風流踊について、「全ての世代の人々を結び付けるネットワークを促進し、コミュニティーへの帰属意識を育む」と指摘。新型コロナウイルスの感染拡大のような非常時には「困難を乗り越えるための助けとなる」と強調した。文化的な意味だけでなく社会的な機能も評価されたことは注目に値する。
伝統の継承に取り組んできた各地の関係者からは喜びの声が上がっているが、地区内で細々と続けられてきたところも多く、人口減や高齢化で担い手不足が課題となっている。また、長引くコロナ禍によって、中止や規模縮小、無観客の対応を余儀なくされたところも多い。
登録が決まった岩手県の川西大念佛剣舞保存会の佐藤円治庭元(にわもと)は、「これを継承していくには地元の皆さん、いろいろな各方面の皆さんの力をお借りしていかないことには続いていかない。若い人たちを中心に、いろいろな面で発信して、いつまでも長く続ける責任がありますので、そこを理解しながらやっていきたい」と語った。今後の行政や地元住民の理解とバックアップが不可欠といえる。
(市原幸彦)



