
奈良市の春日大社国宝殿で夏・秋季特別展として「春日大明神に祈る時代を変えた兵(つわもの)頼朝・義経から幕末まで」が開催中だ(12月13日まで)。国宝殿は春日大社が所有する国宝354点、重要文化財1482点を中心に多数の文化財を所蔵。時の有力者たちの奉納品を多く所蔵し「平安の正倉院」とも称される。
武甕槌命(タケミカズチノミコト)、経津主命(フツヌシノミコト)の二柱の武神を祭神とすることから、武家の信仰も篤(あつ)かったため、刀剣や甲冑(かっちゅう)など武具の奉納品も多い。
同展では源頼朝・義経の時代から幕末まで武運を願う武士たちの奉納品が多数展示されている。武具や書状が主だが、中でも注目は、楠木正成(くすのきまさしげ)が奉納したと伝えられる国宝「黒韋威矢筈札胴丸兜(かぶと)・大袖付」。鹿革を藍で濃く染めた韋緒で威したもの。実戦的な胴丸と筋兜という南北朝時代の特徴を表した美しい甲冑だ。同じく同時代の国宝「黒韋威胴丸兜・大袖付」も展示されている。
このほか国宝級の刀剣多数のほか、武家の書状類も多い。「足利義詮御判御教書案」「豊臣秀吉朱印状」など、どれも時代を超えて春日大社が武家の篤い信仰を集めていたことをうかがわせるものだ。
(藤橋進)



