
【ワシントン山崎洋介】米政府の機密文書が流出した問題を巡り、米連邦捜査局(FBI)は13日、マサチューセッツ州空軍州兵のジャック・テシェイラ容疑者(21)を逮捕した。司法省によると、機密扱いの国防情報を「不正に持ち出し、保持、送信した」疑いがある。FBIは機密文書の入手経路の解明などについて、捜査を進める。
ニューヨーク・タイムズ紙によると、テシェイラ容疑者はゲーム愛好家に人気の通信アプリ「ディスコード」の非公開グループの管理者で、遅くとも昨年10月から機密情報の共有を開始。最終的には「トップシークレット」と書かれたウクライナの詳細な戦場地図やロシアの戦力の評価を含む数百ページの機密文書をアップロードした。
同紙によると、テシェイラ容疑者が情報を流出させた動機は、戦争ゲーム好きの友人らに「現実の戦争」を見せることで「感銘を与える」ことだった。グループにはウクライナ人も含まれており、同容疑者は「OG」と呼ばれ、尊敬を集めていたという。メンバーの一人は同紙に「彼はキリスト教徒で、反戦で、何が起こっているのかを友人の何人かに知らせたかっただけ」と語った。
同容疑者の逮捕を報じたヘリコプターからのテレビ中継は、Tシャツと赤い半ズボンを身に着けたテシェイラ容疑者がマサチューセッツ州にある自宅前で、武装した捜査員に手錠を掛けられ、連行される様子を映し出した。
国防総省のライダー報道官は記者会見で、機密情報を保護するための厳格なガイドラインがあると強調した上で、「今回はガイドラインの違反であり、意図的な犯罪行為だ」と述べた。流出した機密文書には、ウクライナ侵攻の状況に関する諜報(ちょうほう)機関の評価のほか、米国の同盟国などに関する情報も含まれていた。テシェイラ容疑者がこうした広範な機密情報にアクセスできた理由は明らかにされていない。
バイデン大統領は訪問先のアイルランドで13日、記者団に対し「流出が起きたことは懸念しているが、現時点で私が知る限り重大な影響を与えるものはない」と述べ、深刻な影響はないとの認識を示した。しかし、機密情報には、ロシア政府に対する米国などの諜報能力が示されているほか、ウクライナや同盟国の韓国やイスラエルへ諜報活動を行っていたことが示されていたことから、同盟・友好国の信頼を損なうなどの悪影響も指摘される。



