中国、米の介入阻止目指す 米情報機関 年次報告書

台湾有事で27年までに

8日、ワシントンで、米上院情報委員会に出席したバーンズ中央情報局(CIA)長官(右)とヘインズ国家情報長官(AFP時事)

【ワシントン山崎洋介】米国の情報機関を統括する国家情報長官室は9日、世界の脅威に関する年次報告書を発表し、中国は2027年までに台湾有事において米国の介入を阻止できる戦力の構築を目指していると指摘した。

報告書によると、中国は米国が中国を弱体化させるために台湾を「駒」として利用していると主張。中国は台湾への支援強化に対抗するため、より強力な措置を講じるだろうとの見方を示した。また、中国の習近平国家主席が3期目に入り、「中国共産党は台湾に統一を迫り、米国の影響力を削いで、友好国との間に楔(くさび)を打ち込もうとするだろう」と警戒感を示した。

ヘインズ国家情報長官は8日の議会公聴会で、「世界中で経済、技術、政治、軍事的に米国への挑戦を強めている中国は、依然としてわれわれの最優先事項だ」と強調。また、中国は世界の超大国になるという目標のため、近隣諸国の領土や台湾への主権を主張するなど「自国の都合に従うよう強制しようとしている」と非難した。

報告書は宇宙分野に関して、中国は45年までに米国と対等もしくは上回ることで「世界的な宇宙開発のリーダーになるという目標に向かって着実に前進している」と指摘。今後、断続的に乗組員が滞在する月面基地を建設しようとしているとした。また、中国軍は、米軍の情報面での優位性を失わせるため、衛星からの多様な情報を武器や指揮統制システムに統合していくとの見通しを示した。

ロシアについては、ウクライナ戦争における軍事的な失敗によって、プーチン大統領の国内での立場が傷ついた場合、「世論の支持を集めるため、行動をさらにエスカレートさせる可能性がある」と警告。また、ロシアの部分的動員の効果が本格的に現れるのは、春から夏にかけてであると指摘し、「ロシアは引き続きドンバス地方に軍を集中しているが、恐らく今年中に同地方全域を支配することはない」と分析した。

ロシア軍は、ウクライナ紛争で損失を被り、再建には数年かかるため、欧州の安全保障に通常兵器による軍事的脅威を与える能力が低下し、ユーラシア大陸でも以前より強硬な行動は取れなくなると指摘。ロシアは「地上戦力が受けた甚大な被害への対応として、核、サイバー、宇宙への依存度をさらに高める」との見方を示した。