「多くの命 救われる」―中絶反対派  米最高裁前 賛成派は反発

最高裁の決定を受け、歓喜する最高裁前に集まったプロライフ派ら=6月24日、ワシントンD.C(UPI)

【ワシントン山崎洋介】人工妊娠中絶を憲法上の権利とした判決を覆す歴史的な判断が下されたことを受け、米首都ワシントンの連邦最高裁判所前には24日、喜びを表す中絶反対派「プロライフ」とこれに反発する中絶支持派「プロチョイス」が集った。

「今回の決定を聞いた途端、うれし涙が出てきた。これで数多くの赤ちゃんの命が救われることになると思ったから」。アリゾナ大学の法学生で夏の期間、連邦上院でインターンをしているというカリーナ・サルセードさん(22)は、笑顔でこう語った

最高裁に感謝の気持ちを伝えるために来たというカリーナさんは、中絶の是非が各州に委ねられることになったことで連邦主義が守られたとして、「憲法にとっての勝利」だと喜んだ。

米最高裁前で抗議する中絶支持派ら=6月25日、ワシントンD.C(UPI)

最高裁前に集った数百人の多くは、プロチョイス派。「中絶の自由を」などと書かれたプラカードを掲げ、「われわれの体に手出しするな」「最高裁に正統性はない」などと訴えた。

ワシントン市内に住むエミリー・クロケットさん(38)は「女性の人権を侵害するひどい判決だ。生むか生まないかは選択であるべきだ。中絶よりも30倍もリスクが高い妊娠・出産を女性たちに強いることになる」と憤りを示した。同じくプロチョイスのエリサさん(28)は「本当にショックで悲しい。出産するかどうかは、私や他の女性にとって選択であるべきだ」と訴えた。

興奮気味のプロチョイス派がメディアの取材に応じていたプロライフ派の男性を取り囲むようにして、「私の体、私の選択」などと繰り返す場面もあった。

近隣に住み20代半ばだというこの男性は、本紙に「歴史的な出来事を目撃するために来た」と語り、今回の判断について「法的に正しい。悪い判決が覆されたことで、中絶について他の課題と同じように民主的に決められるようになった」と歓迎した。

プロチョイス派から囲まれたことについては、「私にとっては喜ばしいが、彼らは負けたことで苛(いら)立っているのだ。それはつらいことであり、気持ちは理解できる」と思いやった。