イスラエル、パレスチナと聖地で衝突 ロケット攻撃・テロ相次ぐ

「イスラム諸国は団結を」 トルコとイランが呼び掛け

5日、パレスチナ自治区ガザ地区のラファで 行われたイスラエルへの抗議デモ(UPI)

エルサレム旧市街にあるイスラム教聖地ハラム・アッシャリフ(ユダヤ教呼称「神殿の丘」)にある「アルアクサ・モスク」で5日に起きたパレスチナ人とイスラエル治安部隊の衝突以降、パレスチナのイスラム過激派によるロケット弾発射やテロ攻撃が相次ぎ、緊張が高まっている。トルコとイランは、イスラム諸国の団結を呼び掛けた。(エルサレム・森田貴裕)

エルサレムの聖地で5日未明、アルアクサ・モスクに立てこもるパレスチナ人と、暴徒らを取り締まるイスラエル治安部隊が衝突。治安部隊はモスクに突入し、数百人の身柄を拘束した。警察によれば、パレスチナの若者や覆面をした扇動者らが花火や石をモスク内に持ち込み玄関のドアに鍵を掛けたため、治安部隊はモスク敷地内への突入を余儀なくされたという。

レバノンから6日、イスラエル北部に向けてロケット弾30発以上が発射され、うち5発が町や村に着弾。イスラエル人3人が軽傷を負い、複数の建物に被害が及んだ。2006年のレバノン紛争以来の大規模攻撃となった。イスラエル軍はイスラム組織ハマスによる攻撃だと主張した。パレスチナ自治区ガザ地区からは7日までにイスラエル南部に向けてロケット弾数十発が発射された。イスラエル軍の防空システム「アイアンドーム」が迎撃したが、1発がスデロットの住宅を直撃した。シリアからは8日夜から翌朝にかけ、ロケット弾6発が発射された。パレスチナ民兵組織が犯行を主張した。

 イスラエルのネタニヤフ首相は6日夜の声明で、「過激派に対しては断固とした措置を取る」と述べた。イスラエル軍は7日、レバノン南部のハマス拠点3カ所と、ガザ地区のハマスの武器製造施設や地下トンネルなど10カ所以上を標的として空爆し、9日には、シリアの軍施設やロケット弾発射台などを標的に空爆を実施。今後の攻撃に備えイスラエル北部と南部の軍部隊を増強した。

 テロ事件も相次いだ。ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地ゲバビンヤミン近くで6日夜、イスラエル軍部隊へのパレスチナ人による銃撃があり、兵士1人が負傷した。ヨルダン渓谷にある入植地ハムラ近くでは7日、イスラエル人家族が乗った車がパレスチナ人による銃撃を受け、姉妹2人が死亡、母親が重傷を負った。7日夜には、テルアビブの海岸沿いでアラブ系イスラエル人の車が歩道に突っ込み、外国人観光客1人が死亡、7人が負傷した。ネタニヤフ首相は事件後、テロ対策として警察と軍部隊の増強を命じた。

トルコのエルドアン大統領は7日、イランのライシ大統領との電話会談で、アルアクサ・モスクでの衝突を非難し、「イスラム諸国はパレスチナで行われているイスラエルによる攻撃に対して連帯すべきだ」と語った。エルドアン氏は5日、「トルコは、アルアクサ・モスクを踏みにじるような攻撃に対して黙っていることはできない。イスラエルはレッドライン(越えてはならない一線)を越えた」と述べている。トルコは昨年8月、パレスチナ問題を巡り関係が冷え込んでいたイスラエルとの間で、外交関係を完全に回復させることで合意している。今後、パレスチナ情勢の悪化に伴い、イスラエルとトルコの外交関係が再び悪化する可能性がある。

ライシ大統領は9日、シリアのアサド大統領、アルジェリアのテブン大統領とそれぞれ電話で会談し、イスラエル政権の対パレスチナ強硬策について言及。世界は変化しており、イスラエルに対する「抵抗の枢軸」への支持が高まっていると主張。「われわれはパレスチナ解放のために対イスラエル統一戦線を形成する必要がある」と述べ、イスラム諸国に団結するよう呼び掛けた。

ハマスの最高指導者ハニヤ氏は9日、レバノンの首都ベイルートでシーア派組織ヒズボラの指導者ナスララ師と会談。抵抗運動の準備態勢やパレスチナ各派の協力などについて話し合った。パレスチナ自治区では、反イスラエル感情が高まっているという。

アルアクサ・モスクで衝突が繰り返されれば、イスラム過激派によるイスラエルへの攻撃がより一層激しくなり、ハマスやヒズボラとの戦争につながる可能性がある。21年にはハマスとイスラエル軍の11日間の交戦に発展した。