
シリア北部のアレッポ国際空港で6日、イスラエル軍によるとみられる空爆があり、滑走路や親イラン民兵組織の武器倉庫などが破壊され、空港が使用不能に陥った。6月に首都ダマスカスの国際空港が同様の攻撃を受けて以来、国際空港が標的となったのは3回目だ。イスラエル軍によるシリア領内への攻撃が増えている。(エルサレム・森田貴裕)
国営シリア・アラブ通信(SANA)は今月6日、アレッポ国際空港を標的とした多数のミサイル攻撃により滑走路などが破壊され、空港が使用不能になったと報じた。シリア軍の防空部隊がイスラエル軍のミサイルの一部を迎撃したとも述べたが、死傷者については言及しなかった。シリア軍関係者によれば、地中海の上空からイスラエル軍戦闘機がミサイルを発射したという。
英国に拠点を置く「シリア人権監視団(SOHR)」は、イスラエル空軍機が発射したミサイル6発により、アレッポ国際空港の滑走路だけでなく周辺にあるイランが支援する民兵組織の武器倉庫なども破壊され、3人が死亡、5人が負傷したと伝えた。アレッポ国際空港では8月31日にも、イスラエル軍によるとみられる攻撃でミサイル4発が着弾し、滑走路や武器倉庫が破壊されている。
シリア外務省は7日の声明で、1週間に2回のアレッポ国際空港への攻撃は「国際法に基づく戦争犯罪だ」とイスラエルを非難。「イスラエルはその責任を問われなければならない」と述べた。
イスラエル軍は6月10日にも、ダマスカス国際空港を標的にゴラン高原の上空からミサイル多数を発射している。シリア軍の防空部隊がミサイルのほとんどを迎撃したが、滑走路やターミナルビルの一部など施設が破壊され、空港は2週間使用不能になった。
ボイス・オブ・アメリカ(VOA)が亡命した元シリア軍関係者の話として報じたところによると、イランはシリア領内にいる代理武装勢力向けの武器を陸路輸送だけでなく民間航空機を利用して空輸しているという。6月にダマスカス国際空港が攻撃を受けてからは、アレッポ国際空港を使用していたという。
イスラエルのテルアビブ大学国家安全保障研究所(INSS)上級研究員でシリア研究プログラムの責任者を務めるカルミト・バレンシ博士は、米国の中東ニュースサイト「メディアライン」で、「イランからの武器輸送が国際空港を利用して続けられる限り、そこはもはや民間のインフラではない。シリアのアサド大統領がイランに空港の使用を許可すれば、それには代償が伴うだろう」と述べた。
イスラエル軍は8月25日、シリア中部ハマ近郊の都市マスヤフ近くにあるイランが支援する民兵組織の武器庫や科学研究センターを標的に空爆を行っている。SANAは25日、ハマ近郊でミサイル攻撃があり、2人が負傷し、近くの森林で火災が発生したと報じた。イスラエル軍のミサイルは地中海上空から発射されたとも伝えた。
SOHRによると、武器倉庫は巨大で、科学研究センターで製造されたミサイルや、ここ数カ月間にイランから輸送されたミサイルなど約1000発が保管されていたという。イスラエル軍の空爆後に、爆発が6時間近く続き、シリア軍兵士1人が死亡、民間人14人が負傷した。この爆発は、イスラエル軍がシリアで空爆を開始して以来、最大のものとなった。科学研究センターでは、イラン革命防衛隊の専門官の監督の下で1年以上にわたって組み立てられた精密誘導中距離ミサイルの数は1000発を超えるという。
イスラエルのニュースサイト「タイムズ・オブ・イスラエル」が報じたところによると、トルコのシリア問題に関する研究機関「オムラン戦略研究センター」のアナリストであるナワル・シャバン氏は、「イスラエル軍の空爆を受けた地域を見ると、イランの勢力地域がさらに拡大したことを示していることが分かる」と語る。「数年前の空爆はダマスカス周辺地域や北西部の軍事地域に集中していたが、アレッポや地中海沿岸地域にまでに及んでいる」と述べた。
今年に入りイスラエル軍によるシリア領内への攻撃は24回を数えた。イランの勢力拡大に伴い、今後もイスラエル軍の空爆が続けられる可能性がある。



