【ポイント解説】抑制された隣国関係へ

4日付この欄で「岸田首相へのおもてなしと酒量」に関心を向けた。だが石川県能登地方地震で大きな被害が出たことで「お祭りをやっているときではない」との配慮から、夕食会についての詳しい公開は控えたという。抑制と配慮が利いている。
それに過去史問題への言及は「歴代内閣の認識を継承」までだと思っていた韓国にとって、「心が痛い」と自ら書き加えた岸田首相の“一筆”は多少なりとも顔の立つものとなった。
顕忠院への参拝・献花も韓国民の心を慰めた。「独立運動家」や国家功労者、戦死者などを祀(まつ)った顕忠院は日本の靖国神社に当たる。4月の春の例大祭で岸田首相は真榊(まさかき)を奉納したが、参拝はしなかった。首相在任中の参拝は隣国を刺激するといって控えるのだろうが、韓国の顕忠院は参拝して靖国神社へ参らないことの説明も必要だろう。
広島G7サミットで「韓国人原爆犠牲者慰霊碑」にそろって参拝することも決まった。駐日韓国大使館領事館の関心の薄い中、普段ここを清掃しているのが日本人であることもぜひ紹介してほしいものだ。
「汚染水」処理を直接見せるというのも日本側の配慮だ。韓国は普段日本の14倍ものトリチウムを放出している。韓国の政府系研究機関が日本の処理水は「検出できない程度の濃度だ」と説明しても、韓国世論は「危険だ」として反発する。
海洋放出してそれが韓国に流れ着くのに4~5年と推定され、その間に希釈されることは言うまでもないが、韓国が放出する14倍の汚染水が日本沿岸に到達するのに数日とかからないことにはだんまりだ。
韓国が先に関係正常化の手を差し伸べたと自賛するが、日本が“大人の配慮”をしていることにも気付くべきだろう。政権基盤の弱い尹錫悦大統領へのテコ入れが随所にある。次は尹大統領が広島に来る。両国メディアは淡々と事実を報じてほしい。
(岩崎 哲)



