「自由」を「勝手気まま」と解釈
は反保守運動の先駆者で民主党の最も強力なスピーカー(セゲイルボより).jpg)
韓国は保守派の尹錫悦政権になって「国交正常化後最悪」と言われた日韓関係を修復しようとする動きに拍車が掛かっている。最大の懸案だった「元徴用工」問題も韓国政府が「弁済」する形で「賠償金」を支払うことになり、既に何人かが受け取った。
コロナ禍で途絶えていた観光も堰(せき)を切ったように往来が開始された。特に韓国人観光客が日本に殺到し、動画サイトには日本旅行の様子が数多くアップされている。日本アニメ映画も韓国人観客を惹(ひ)き付けて大ヒットするなど、文在寅前政権の時の「反日キャンペーン」の頃とは隔世の感だ。
ただ、これで日韓関係が良い方向に向かうと手放しで喜ぶことはできない。いくら旅行に来たり、アニメを見たりしたところで、韓国人の対日観、特に歴史観が根本的に変わったわけではないからだ。さらに今後の韓国を主導する世代の性向を見てみると、まったく楽観はできないことが分かる。
新東亜(4月号)に政治経済評論家のハン・ジウォン氏が「70年代生まれはどのように民主党を熱烈に支持するようになったか」という原稿を寄せている。ハン氏は1990年前後を「文民化」の時代と呼び、この時代を経験した世代を「X世代リベラル」として、「個人主義、消費文化、自由奔放さ、反権力主義」で説明されるとした。激しい学生運動を経験し、労働界も過激化していった時代だ。
ハン氏自身がこの世代に当たり、「反日民族主義にどっぷり浸かっていた。悲壮なまでではなかったが。ある年は日本漫画『スラムダンク』に熱狂し、翌年には日本が韓国を侵略するという漫画を読むという格好だった」とし、世代全体がこうした時代の雰囲気だったと述懐する。
ここでハン氏は思想史的説明をするのだが、いわば「自由」を「勝手気まま」と解釈するにとどまる程度のリベラルだったとし、政治的には盧武鉉から文在寅に連なる「進歩」であり「保守への嫌悪」と「偏向」を露呈していたと分析する。
例えてみれば、かつて日本の言論界の一角で一定の影響力を持っていた「進歩的文化人」のような人材が「民主」「反戦」「人権」を唱えて韓国論壇の主流となりつつあるというのだ。
問題なのは、このX世代リベラルが「21世紀に入って韓国社会の方向を握る重要な変数として登場」しながら「もっとも大きい世代集団になる」ということだ。「老人のリベラルが韓国社会をどこに導くか、今から心配になる」とハン氏は述べる。
ならば、好転しているように見える対日関係もいつ反転するか分からないということだ。むしろもっと厳しい対日姿勢をぶつけてくる可能性すらあると見なければならない。ハン氏の論文を日本から読んで見える風景である。
(岩崎 哲)



