【ポイント解説】わだかまりは同じ日韓メディア
急激な反転だった。韓国の尹錫悦政権が「元徴用工」問題の解決策を打ち出す前後から、対日関係改善を「まず韓国が取り組みました」とばかりに打ち出し、日本の「呼応」を促してきている。
ウクライナ戦争、中国の覇権主義、北朝鮮の核・ミサイル、サプライチェーン(供給網)の不安定化等々、理由はさまざまあるだろう。だが、何があっても「反日が国是」の韓国の急変はある程度予測されたことではあるものの、これまでの数々の対立原因からして「どの面下げて」の「手のひら返し」なのかと、日本は変化のスピードについていけない。
日韓の間には元徴用工問題だけでなく、自衛隊機への火器管制レーダー照射、輸出管理強化の原因、対馬仏像返還問題など中ぶらりんの懸案が数々あり、慰安婦像の撤去など日韓合意の履行、竹島不法占拠など根の深い問題が横たわっている。
記事が指摘するように東アジア情勢を考えれば日米韓の関係強化は待ったなしだが、これらの根の深いわだかまりを抱えたまま、当面の課題に対処するために、取りあえず手を握れとの促しには、そう簡単には応じられないという気持ちがくすぶっているのも事実だ。それどころか韓国では野党はじめ“市民団体”や左派メディアが尹政府の対日外交に激しく反発している。
とはいえ、台湾海峡で火が吹き、朝鮮半島に飛び火してからでは遅い。早急に態勢を立て直したいとの思いは米国だけでなく、日韓双方にもある。メディアは気まずく感じても、外交は譲れるところ、譲れないところを抱えつつ前に進むしかない。両国関係をかき乱すのはいつも双方の政治家とメディアだが、当面の外交日程を真っすぐ見つめ、日韓政府の行方を見守るしかない。
(岩崎 哲)



