【ポイント解説】適時の岸田首相訪韓が必要
2011年、京都を訪れた李明博大統領は突然、野田佳彦首相に向かって「慰安婦問題を解決せよ」と迫った。野田首相にとっては寝耳に水の話。戸惑いは隠せなかった。元々同問題は「問題ですらない」との認識があったからだ。その後10年間続いた日韓関係の悪化はこの時に始まっている。
それでも日本側は韓国の要求に応え、2015年安倍晋三政権と朴槿恵政権との間で「慰安婦合意」が結ばれ「最終的かつ不可逆的」に決着した。ところが、その後の文在寅政権によって合意は事実上反故にされる。さらに2018年、韓国最高裁は元徴用工への賠償判決を確定し、関連企業の資産差し押さえまで行った。
これらは日本側から見れば、既に解決済みの問題をことごとく蒸し返して、1965年に締結した基本条約、請求権協定を否定し根本からやり直そうとする「歴史の書き換え」を韓国が始めたと映った。
今回の首脳会談ではそれがようやく元の地点に戻ったにすぎない。「日本側の呼応」も何も、韓国が勝手に掘って、韓国が勝手に埋め戻しただけの話だ。
確かに尹政権は国内的に難しい立場に立たされながら、前政権の尻拭いをしつつ、大局的立場で日本との関係改善に乗り出した。その決断は評価されるべきものだが、「日本の呼応」に対する韓国民の期待を膨らませるのは危険だ。呼応がない時には窮地に立つ可能性があるからだ。
わが国も「未来志向の日韓関係」を定着させる必要がある。まずはシャトル外交を再開し、双方が接触と対話を絶やさないことだ。そのためには年内と言わず、できれば広島サミット前に岸田首相が韓国を訪問することも必要ではないか。
(岩崎 哲)



