「記事より共産党業務」の批判も
周玉波氏は一昨年、人民網の韓国子会社「ピープルドットコムコリア」と共に、自身をスパイと批判した韓国保守派のネットメディアやユーチューバーらを相手取り損害賠償訴訟を起こした。
女性であることを武器に政治家などに接近して工作活動をしたなどとする主張は「虚偽事実の流布」であり「名誉棄損」に当たるため、被告ごとに各1億ウォン(約1050万円)賠償せよという内容だ。
原告代理人は「文在寅政権に近い」(韓国メディア)と評されたLKB&パートナース。文政権時に浮上した政治絡みの各種疑惑を巡り、政権サイドを弁護した法律事務所だ。
一連の訴訟のうちユーチューブチャンネル「アスファルト義兵軍団-太極戦団ダイナーキム」の運営者が訴えられた訴訟の一審判決が今月2日、ソウル中央地方裁判所であり、子会社の請求は棄却されたが、周氏の一部主張は認められ、700万ウォン(約74万円)の支払いが命じられた。
同運営者は同様の訴訟で昨年罰金刑が確定していたこと、判決を下した判事は司法の左傾化が指摘された時の人事で現職に任命されたこと、「理念にとらわれ根拠も不足な状態」(判決文)でスパイと断定的に言及したことが影響を与えたようだ。
周氏が訴訟に踏み切ったのは、豊富な資金力を背景に無力なネットメディアやユーチューバーを裁判で打ち負かし、口封じする狙いがありそうだ。
だが、「証拠がなくても実在した話は無数にあり、証拠がなければ信じられないわけではない」(元政府系シンクタンク幹部)のも確か。そもそも「中国共産党の対外連絡部はそう簡単に証拠を残さない」(韓国政府当局者)と言われる。
あるネットメディアは周氏の疑惑を巡り次のように指摘している。
「通常メディアが海外支社を開設する場合、主に現地に関する報道を中心に自国に記事を送る業務に携わるのに比べ、人民網はまるで韓国が中国の地であるかのごとく政官界関係者を引っかき回し、共産党の業務を遂行しているのではないかという批判が出ている」



