【ポイント解説】中国の視点で政府を批判
日本と韓国が「春節」(旧正月)連休を控えて大移動が予想される中国人入国者に対してPCR検査と陰性証明の提出を義務化した。これに対して中国は日韓両国民への短期ビザ発給を停止した。あからさまな報復措置である。
その中国は「ゼロコロナ」を一気に緩和したことから全国で感染爆発が起こった。しかしそのまま統制を続けていれば、中国人にとって大切な家族行事である春節の帰郷や、我慢をしてきた海外旅行が相変わらずできない状況が続き、国民の不満が膨らむ恐れがあった。規制緩和は国内事情から言っても採らざるを得ない措置だったのだろう。
だから、主な海外渡航先である日本と韓国が中国人入国者に課した措置は中国当局にとって我慢ならないものに映った。旅行に行けない国民の不満のはけ口にする意味でも、日韓に報復措置を取ってみせたといったところか。
中国は29日になって日本に対するビザ発給を再開したが、韓国への措置は継続している。これは韓国が当初1月末までにしていた制限を2月末まで延長すると決定したことを受けたものだ。中国からの入国者に感染者が多いための措置継続だから、韓国にも言い分があるわけだが、日本は解除して韓国は継続、と対応が違うことに韓国は不満がある。
これまでも中国の日韓への対応には違いがあった。その際、韓国への措置がより厳しいものになることがしばしばで、韓国では中国に甘く見られているといった反発や敵愾心(てきがいしん)が沸き起こったものだ。
ところが、この記事はまるで中国人記者が書いたようで戸惑う。韓国当局がいたずらに中国に厳しい措置を取っているといい、「政治的判断」で「感情が優先」と尹錫悦政府を批判しているのだ。「科学的根拠」をいうなら、1月後半の2週間に韓国入国者のうち感染が確認されたのは1404人で、そのうち890人が中国からの入国者だった事実はどう捉えるというのだろうか。
(岩崎 哲)



