
CES2023で注目集める
最近ある輸入車ブランドのセダンに試乗し、運転でなくエンターテインメントを体験するために後部座席で長い時間を過ごした。操作ボタンを押すと運転席と後部座席の間を仕切る大型ディスプレーが下りて、両サイドと後ろの窓もブラインドが広がった。画面にだけ没入できる薄暗い空間になったのだ。
タッチスクリーンでネットフリックスの映像を一つ選んで再生してみた。大型画面とスピーカーで武装した映画館の圧倒される感覚には及ばないが、小さな空間で1人で感じられる繊細な音と微細な振動はユニークな没入感を与えてくれた。
先に発売されたある電気自動車はゲームセンターでしか楽しめなかったレーシングゲームを車内で実現した。車が駐停車している時、運転席でハンドルを握ったまま前方でなくダッシュボード中央の1人称視点画面を見て仮想運転をするものだ。ハンドルを切るたびに車輪が実際に動いた。ゲームの完成度はまあまあだったが、運転の質感はまことに現実的だった。
この数十年間、車内で楽しむものと言えば主にオーディオだったが、今はビデオを超えて仮想世界にまで進化していることを示している証拠だ。
今月8日(現地時間)まで米ラスベガスで開かれていた世界最大のテクノロジー見本市「CES2023」でも、完成車メーカーは車の“動くエンタメ”としての可能性を示すことに多くの時間と空間を割いた。さまざまな展示会場で断然注目された技術はエンタメ関連技術だ。
日本のソニーはホンダと共に今回の見本市で、初めて電気自動車の構想を公開した。ビデオゲームに使われるようなアンリアルエンジンの3D技術で駆動するゲームをはじめ、映画、音楽などを提供して、動くエンタメのプラットホームにするという内容だ。
現代自動車はPCゲームを駆動するチップを製造するエヌビディアと協業して、車内でクラウド基盤PCゲームサービスを提供すると発表した。エヌビディアの同サービスは1000個以上の無料ゲームを提供する。同社は、中国のBYD(比亜迪汽車)とスウェーデンのポールスターにも同じサービスを供給することにしている。
自動車が巨大なエンタメ装置になるのは自動運転の流れと関連がある。今年は運転者がハンドルを握らなくてもよい自動運転のレベル3が本格的に商用化されるものと見られる。乗客だけでなく運転者が走行中にもエンタメサービスを楽しむことができる基盤が設けられるのだ。
人々の時間を占有することが即、企業の収益性に連結される時代だ。人々を車に長くとどまらせるエンタメ機能は、今後発売される車の成功と失敗を分ける重要な基準になり得る。今回の見本市で注視すべき他の点は量産可能な技術が大挙提示されたということだ。近い将来、現実化する車の変身が期待される。
(ベク・ソヨン産業部次長待遇、1月20日付)



