【韓国紙】与党は“尹心”より民心ではないのか

【ポイント解説】ヨイド政治に染まる“元検察総長”

 検察畑一筋でやってきて、国会議員の経験もなしに、いきなり大統領になった尹錫悦氏。「ヨイド(日本で言う永田町)政治に馴染(なじ)めるか」と危惧されてきたが、1年が経(た)ってみれば「韓国大統領」という地位は人物に関係なく、権力の中心になる。

 王の咳(せき)払い一つで官吏の首が飛んだ中国や朝鮮の古い王朝のような政治風土は今も色濃く残っているようだ。大統領制は権力が一点に集中する。その動静に敏感になるのも無理はないが、集中し過ぎるあまり、権力型不正が横行してきた。退任後に訴追されるなど余生を全うできない“最もリスクの高い職”と言われる所以(ゆえん)だ。そのため、内閣制議論が出ては消えてきたが、1年目で出る議論ではないし、権力者が自らの力を弱める改正をするわけがない。

 尹氏が大統領の椅子を得たが、国会は野党が多数を占め、政権交代は完成していない。来年に予定されている総選挙がその仕上げとなり、それまではままならない国政運営を強いられる。

 与党代表選は総選挙の舵(かじ)取りを任せる重要な人選となる。そこで大統領と「同期」できる人物が求められるわけだ。尹氏がヨイドの水に馴染めないとしても、大統領という地位に対して周囲がおのずと形を作ってしまう。かつての「ノサモ」(盧武鉉を愛する集い)のような左派的なソフト路線ではないものの、「尹核心関係者」(尹核関)と呼ばれる集団が形成されて、王の威を借りた“集団の意思”のようなもの、つまり「尹心」が政治を動かしていく。これに尹氏の意向がどれほど反映されるものなのかは別にしてだ。当面、与党代表選が焦点になる。(岩崎 哲)