【韓国紙セゲイルボ】将来への期待と憂慮が交差する癸卯年

【ポイント解説】変わらぬ韓国の政治文化

韓国の尹錫悦政権は昨年3月に行われた大統領選でその差0・73ポイントと、ほぼ“誤差の範囲”で辛うじて政権交代を成し遂げた。5月に就任したが国会は「与小野大」で多数野党の抵抗に遭いながら薄氷の政権運営を強いられてきた。

来年4月に予定されている総選挙で与党が多数を確保するまでは、この状態が続くということだが、与党が勝つという保証はどこにもない。

与党も野党も拮抗(きっこう)する支持を得ている。裏を返せば国民が両極化しているということで、政党は半数の支持を得ている以上お互いに一歩も引かず、支持者側も岩盤化して寛容さをなくしている。今後の政権運営によってこの均衡状態がどう変化していくか、韓国政治のポイントとなる。

その政治が迫られている課題は多い。経済では金融、不動産が喫緊の課題だ。家計債務が最悪水準と言われ、不動産バブル崩壊の予兆も聞こえ始めている。外交では米中対立の中でこれまでとは大差ないものの、一応自由民主陣営に軸足を置いて、対日関係改善の姿勢を示しているが、台湾海峡等、近隣情勢の変化によってその軸がどうブレてくるかは分からない。

北朝鮮のミサイル挑発が続くが、国防力が気力実力ともに低下している。無人機の領空侵犯を見過ごし、ミサイル発射の不手際が続く。思想的にも体制的にも軍を“骨抜き”にした前政権の負の遺産だ。壊すのは一瞬だが、回復には時間がかかる。南北関係はそれを待ってはくれない。

論説を書いた尹教授は韓国の政治文化そのものを変える必要性を説いているが、白黒をはっきりさせ勝者が総取りする文化が、そう容易に短期間にガス抜きと妥協の政治の知恵を身に付けるとは思えない。癸卯(みずのとう)年も多事多難ということだ。

(岩崎 哲)