【ポイント解説】尹政権の正体はどこに
韓国は尹錫悦政権になり、自由人権と民主主義の価値を共有する国となった。そう思い、北朝鮮の核・ミサイル危機も迫っていることから「徴用工」等の懸案がありつつも日本政府は対話に応じた。これで日米韓の自由陣営の再結束がなされるかと期待が寄せられた。
だが、尹政権の「正体」がいまひとつ分からない。相変わらず中国、ロシアに対して及び腰なのだ。グローバル中枢国を自任しながらも「報復」を惧(おそ)れて両国への人権非難決議に加わらなかったとすれば、その看板は偽物であり、世界にそれを示したということだ。
中国は韓国にとって最大の貿易相手国だから、これを考慮するのは分かるとしても、ロシアは韓国にとり大きな貿易相手でもない。なぜ非難決議に賛成しなかったのか、「国益などさまざまな観点を総合して考慮した」という説明だけでは分かりにくい。
答えはロシアのウクライナ侵攻にある。欧米諸国が対露制裁している中で、韓国の動きが活発化してきているのだ。ロシアの液化天然ガス(LNG)輸出国リストの上位に韓国が上がってきている。欧米が手控えている隙にエネルギー確保を優先させたわけだ。
それ自体は非難されるものではない。わが国もサハリン2を進めている。だが決定的な違いはプロジェクトに加わりつつも、非難決議はしているということだ。ここに国力と同盟力の差が出ている。もし韓国が日米と強い関係を維持していれば、非難決議をしたとしても、エネルギー確保の道はあっただろう。どっちつかずの態度は相手から見くびられる。
その一方で、北朝鮮非難決議には加わっている。北に対する態度は前の文在寅政権との違いがはっきりしている。それはそれでいいのだが、逆に尹政権に南北対話ルートがあるのか心配だ。
北朝鮮に対して「大胆な構想」を提示した尹氏に北朝鮮は「大バカ」「野良犬」と応えている。尹政権の外交、南北関係の成果はまだ問える段階ではない。
(岩崎 哲)



