【ポイント解説】神経尖らす「東北工程」復活
収まっては持ち上がる。韓国と中国の歴史論争である。根本の認識が変わらない限り火種は残ったままだから、燻(くすぶ)りは続く。この火種を完全に消すことが難しいのは一方がしきりに空気を送り込んでいるからだ。
中国は少数民族を取り込んでいく国家プロジェクトを進めており、東北工程は東北地方の古代史の見直し(書き換え)を通じて歴史面での一体性を持たそうとするもの。55の少数民族がいま露骨に「中華」化されようとしている。チベット、ウイグル、モンゴル、そして約200万人いる朝鮮族と、次々に「工程」が仕掛けられている。
歴史論争が吹っ掛けられたのは2002年だが、韓国の抵抗で完全に高句麗や渤海の歴史論争に決着が付けられているわけではない。自国内では、しっかり自国の論理が押し通される。
今回は古代青銅器展で掲示された年表に中国の本音が現れてしまった。韓国側の強い抗議で撤去されたが、韓国はこうした事例をその都度、抗議して潰(つぶ)すということを繰り返さなければならないから、その負担は相当に大きい。
韓国は同じような歴史認識問題を日本とも抱えている。ユネスコ遺産である端島(軍艦島)では「徴用された朝鮮人労働者をめぐる説明が十分ではない」とユネスコの世界遺産委員会を巻き込んで日本にいちゃもんを付けてきている。登録を目指す「佐渡の金山」についてもネガティブキャンペーンを行って、芽の段階から潰すという念の入りようだ。
中国、日本双方に目を光らせ、常に論争を吹っ掛けて来る韓国。自国の歴史や自尊心を取り戻そうとする試みは国家として当然なものだが、不当な抗議、根拠のない主張、悪意ある中傷は逆に韓国の味方を減らす、ということも考えた方がいい。ただし高句麗、渤海については韓国に分があると思う…。
(岩崎 哲)



