【韓国紙】韓国新政府に要求される外交とは?

【ポイント解説】「原則ある外交」のぎこちなさ

「中国の夢」「中国製造2025」など中国が“失われた120年間”を取り戻し、かつての中華帝国再興の夢を隠さない。当時、清が西欧列強に伍(ご)すことのできる大帝国ではなく、彼らが思い描く「中華」がどの時代のものかも定かでないが、中華の夢は今の中国人を捉えて離さない。

ソ連崩壊から、経済規模では韓国に抜かれるほど“落ちぶれた”ロシアは、ソ連帝国、ロシア帝国の再興の夢をプーチン大統領に託し、ウクライナに攻め込んだ。

ハンガリーにもトルコにも“強い指導者”が現れ既存の秩序に挑戦している。

日本は少なくとも「普通の国」になるべく、憲法を改正し、自衛隊を国軍に定め、国連で常任理事国の地位を得ようとしているが、肝心の国民的コンセンサスを得るところにまで至っていない。別の言い方をすれば、国民がそこまで覚悟していない。

韓国は経済協力開発機構(OECD)メンバーとなり「世界10圏内の経済大国」を誇っているが、「分断」の頸木(くびき)から逃れられないでいる。モデルとすべき過去の王朝はなく、だから「かつて見たことのない国」(文在寅前大統領)を目指したが、強大国間のパワーゲームに翻弄(ほんろう)される。

世界中で「力による既存の秩序変更」が試されており、それぞれの国が自分の“あるべき姿”を模索し、それに近づけようとする。当然、周辺国との軋轢(あつれき)が生じ、その解決を力に委(ゆだ)ねようとしている。

東アジアでも中国が手始めに台湾の統一を企図して武力示威にでた。軍事的緊張が高まれば、わずかな切っ掛けで火が吹いたのは「柳条湖」や「満州某重大事件」の例もある。さまざまな“時代の閉塞(へいそく)状況”を吹き飛ばすボタンに指がかかっている。

そんな国際情勢、時代認識は妥当なのに李相桓教授の「原則ある外交」の勧めだけがぎこちない。ないものを求めて議論するソンビ(教養貴族階級)はまだ生存していたのだ。

(岩崎 哲)