フランス南西部サンジャンドリュズにあるカトリックの私立高校で、スペイン語の女性教師が、授業中に生徒に刺され死亡する事件が起き、フランス全土に衝撃を与えた。
学校の荒廃が問題視されてから30年がたつフランスだが、暴力の大半は社会的に不利なアラブ系移民が多く住む貧困地区で発生しており、治安悪化やテロリストが生まれる温床にもなっている。
政府は1981年から教育重点地区(ZEP)を指定し、監視と教育環境の改善に取り組み、今はZEP指定高校はなくなっている。だが、今回の事件発生地区はZEPどころか、大学進学率も高く、しかも規範教育を行う伝統的なカトリックの私立学校だ。容疑者の生徒も多少、スペイン語が苦手だったというだけで、落ちこぼれでもなかった。
フランスでは、校内暴力など公立校の荒廃が激しいために子供を私立校に移す現象が約20年前から始まった。フランスの私立校の大半はカトリック教会組織が運営する初等、中等学校で、今では教育熱心なアラブ系移民家族の子供も受け入れている。
事件が起きたフランス南西部はカトリックが強い地域でZEPとは無縁だったし、アラブ系民の子供が多い公立中学校でもなかった。つまり、今回の事件は起きるはずのない学校で起きた。
フランス人の多くはカトリックの私立校にまで暴力と治安悪化が広がっていることを思い知らされ、その衝撃は大きかった。逮捕された容疑者の動機は判明していないが、前日に会った人物の影響が指摘されている。(A)



