プーチン批判の露人記者、緊張の脱出 パリで証言

モスクワの裁判所に入るマリーナ・オフシャンニコワさん(手前)=昨年8月8日(AFP時事)

【パリ安倍雅信】ウクライナ侵攻を批判したことで当局の捜査を受け、幼い娘とともにロシアを脱出していたジャーナリストのマリーナ・オフシャンニコワさん(44)が仏TV・BFMのインタビューに応え、裁判の1週間前に弁護士に逃げるよう強く言われ、ロシア国境を越えるため7回乗り物を替えるなど緊張の連続だったと当時の様子を語った。

ロシア国営テレビ「チャンネル1」の編集者だったオフシャンニコワさんは昨年3月14日、ニュース番組の放送中、原稿を読むアナウンサーの後ろに立ち、「戦争反対」などと書かれたプラカードを掲げ、その映像は全世界に流された。放送前には「侵略者はロシア、責任はウラジーミル・プーチン露大統領一人にある」とのメッセージを動画で流していた。

放送後、直ちに逮捕され、ビデオメッセージについて罰金3万ルーブル(約3万3000円)を科せられた上で釈放されていた。7月にはモスクワのクレムリン宮殿近くでのデモに参加し、ロシア軍に関する「偽情報」の拡散を禁じる新法に違反した罪で起訴された。15年の禁錮刑の可能性があり、ドイツに逃れたが子供の親権を争うためロシアに戻っていた。

今回の逃亡計画は国際ジャーナリスト団体、「国境なき記者団(RSF)」が関わった。RSFのドロワール事務総長は「最初にオフシャンニコワさんにメッセージを送ったのは、彼女がテレビであのプラカードを掲げた日だった」と説明、「助けがいるか。私たちはここいる」とのメッセージを送ったという。その後、9月に入り、仲介人を通じて国外脱出の要請があったという。

ただ、当局の監視下にあったオフシャニンコワさんは逃亡防止用の電子ブレスレットを着けていた上、周囲の人々はプーチン支持者だったため、彼女の強い意志と行動力が頼りだったとドロワール氏は述べている。昨年、マクロン仏大統領も受け入れを表明。現在パリに住むが、常に命の危険にさらされているという。

さらにオフシャンニコワさんはプーチン氏周辺の指導者らは「自家用機やヨットなどの資産を失い、何もかも理解している。ウクライナの勝利が近づいた途端、プーチンに巨額の請求書を突き付けるはずだ」と述べた。