
情報戦はウクライナの圧勝
――ウクライナのゼレンスキー政権の汚職問題が浮上した背景にロシアの情報戦があると考えられるか。ロシアの情報戦への評価は。
ウクライナ戦争が始まって分かったのは、ロシアはなかなか情報戦に長(た)けているということだ。
例えば、ウクライナ戦争で電気ガス代が暴騰した欧州諸国では、「ウクライナのせいで光熱費が高騰して自分たちが苦しい。なぜウクライナのために犠牲になる必要があるのか? 政府にウクライナ支援をやめさせよう」といった情報が拡散されている。
とはいえ、大局的に見ると、情報戦ではウクライナが圧勝していると言える。ゼレンスキー大統領は、たくさんの国々、国際機関で、オンライン演説を行っている。こういう形態の情報戦は、人類史上初だ。昨年3月の国連総会では、141の国が、ロシアによるウクライナ侵攻を非難した。そのうち、約50カ国が、積極的にウクライナ支援を続けている。
一方ロシアは、どうだろうか。中国の習近平主席は、バイデン米大統領やドイツのショルツ首相に、「共に核兵器使用や核による恫喝(どうかつ)に反対しよう」と提案した。つまり、「一緒にプーチンに反対しよう」と主張しているのだ。そして、中国は、ロシアに武器を提供していない。
困ったロシアは、北朝鮮から武器弾薬を輸入し、イランからドローンを買っている。ロシアの孤立は明白だ。理由は、はっきりしている。ロシアが「侵略国」だからだ。ウクライナに侵攻したことは、明白な国際法違反だ。
――この戦争の終結があるとしたら、どのように予想するか。
楽観的なシナリオは、ゲラシモフ参謀総長が指揮するロシア軍がウクライナ軍に敗北すること。戦術核の使用は、FSB、SVRの「常識派」の抵抗で阻止される。プーチン氏が失脚し、新たな大統領が誕生する。新たな大統領は、すべてをプーチン氏のせいにし、停戦交渉を開始し、成功する。
最悪のシナリオは、プーチン氏が戦術核使用を決断する。NATOが黒海艦隊を殲滅(せんめつ)する。ロシア対ウクライナの戦いはNATO対ロシアの戦いに転化し、第3次世界大戦が勃発する。
少なくとも、戦術核が使われない未来を願っている。(聞き手=窪田伸雄)



