仏、IS妻子の帰国受け入れ 8人即時勾留、残り起訴も

【パリ安倍雅信】シリア・イラク内戦で過激派組織「イスラム国」(IS)の戦闘に最も多く加わったとされるフランス国籍者の妻15人と子供32人が24日、シリア北東部の収容所から本国フランスに送還された。仏政府は問題を起こした国で容疑者やフランス人妻は裁かれるべきだとしていたが、国際機関や家族からの圧力を受けて本国送還を受け入れた。ただ、今後、フランスでのテロの可能性も懸念されている。

フランスでは2014年以降、聖戦主義に感化されたフランス人(主に北アフリカ・マグレブ出身者)がシリアとイラクの戦闘に参加するようになり、18年までに2000人以上がフランスと行き来し、15年のパリ同時テロの首謀者もシリア滞在歴があったことが確認されている。

仏外務省は18年にシリアやイラクで戦闘に加わったフランス国籍者および、彼らの家族の帰国を拒否、シリアやイラクで裁かれることを望んだ。ただ、収容生活は長期化し、シリアにとっても負担となっていただけでなく、収容所内での暴力が多発し、子供の扱いにも苦慮していた。

仏外務省は今回受け入れた帰国者について「未成年者は養育を担当するサービスに引き渡され、医学的および社会的フォローアップの対象となる」とし、「成人は管轄の司法当局に引き渡された」と付け加えた。昨年7月には16人の母親と 35人の未成年者を帰国させ、10月20日に15人の女性と40人の子供の帰国を許可したのに続き、今回の帰国受け入れは3回目で大規模な帰国だ。

24日にフランスに送還された女性と子供たちは、ISの聖戦主義者と行動をともにしており、身柄を拘束された後、イラクとトルコの国境から約15㌔離れたクルド人支配下のロイ・キャンプに収容されていた。今回送還された15人の女性のうち8人が拘留されたと、国家対テロ検察が発表した。さらに残りの7人も起訴の可能性があるとしている。

フランスは、ISメンバーの妻たちがフランス国内でテロを実行する可能性を否定できないとして、昨年の夏まで、母親が親の権利を放棄することに同意した孤児や未成年者を対象に本国送還を進めていた。19年以降、収容キャンプで女性への拷問や非人間的扱いが国際的批判を受け、欧州人権委員会からも女性と子供の送還を拒否するフランスに圧力が加えられていた。