原発再稼働、電力輸出へ フランス 予想に反し暖冬

【パリ安倍雅信】フランス政府は昨年秋以降、ウクライナ紛争の長期化によるエネルギー不足懸念から企業と市民に節電を呼び掛けていたが、周辺国からの輸入よりも多くの電力を欧州近隣諸国に輸出し始めている。理由の一つは例年の冬より寒さが和らいでいること、点検や調整で停止していた原子力発電所が稼働したこと、さらに企業と個人の節電効果が指摘されている。

黄信号が灯(とも)っていたエネルギー不足が「緑」になり、フランスは数カ月ぶりに欧州近隣諸国に輸出できるようになった。専門家は暖冬と原発再稼働や節電効果だけでなく、風力発電に有利な風が吹いていることも挙げている。

送電事業者「RTE」によると、今年1月1日以降、電力輸出の純残高は時間当たり1・4テラワットに達しているという。これは45万世帯が1年間に消費する電力に相当する。RTEによると、フランスは昨年のクリスマス休暇の最初の週から純輸出に戻り、特にこの冬の警戒下で電力システム逼迫(ひっぱく)懸念が緩和されたとした。

政府の働き掛けを受け、仏電力公社(EDF)は昨年末から、腐食によるメンテナンスのために2021年末から停止されていた多くの原子炉を稼働させた。現在、原子炉稼働率は73・5%まで回復した。ただ、政府は今後の気温低下などを念頭に、節電を続けるよう呼び掛けている。