中国 生物兵器開発中に流出 コロナ起源 米共和党議員ら指摘

武漢研と軍の機関に関係性

記者会見に応じるブラッド・ウェンストラップ米共和党下院議員=2019年1月15日、ワシントン(UPI)

【ワシントン山崎洋介】新型コロナウイルスの起源をめぐり、共和党下院議員らは今月中旬に発表した報告書で、同ウイルスは中国軍が生物兵器を開発中に流出したものであった可能性を指摘した。こうした主張は「陰謀論」として一蹴されがちだが、共和党議員らは新型コロナの起源となったことが疑われる武漢ウイルス研究所(WIV)と生物兵器研究を行ってきた中国軍の研究機関との関係性を示すなどして、一石を投じた。

下院情報委員会のブラッド・ウェンストラップ氏ら共和党議員は報告書で、「新型コロナが中国の生物兵器研究計画と関係し、WIVにおける事故により流出した可能性がある」と結論付けた。一方で、中国軍が「意図的に新型コロナを放出したという兆候は見られなかった」とも述べている。

この報告書の中で焦点が当てられているのが、中国軍の研究機関である軍事科学院軍事医学研究院(AMMS)だ。

1951年に設立されたAMMSは、11の研究所で構成され、そのうちの一つが微生物疫学研究所(通称・第五研究所)だ。中国は90年代に、生物兵器禁止条約の信頼醸成措置の下で、この第五研究所が防衛的生物兵器研究の一部を担っていると公式に宣言した。

その後、米国務省は2005年、中国が攻撃的な生物兵器研究も実施しているとの評価を発表。これに関与している可能性がある二つの機関の一つとして第五研究所を挙げた。その翌年に中国は、生物兵器禁止条約の遵守(じゅんしゅ)宣言で、第五研究所が新型コロナも属する急性呼吸器症候群(SARS)系コロナウイルスの研究を行っていることを認めている。

AMMSの公式出版社は15年、「SARSの非自然起源と新種の遺伝子兵器としての人工ウイルス」と題する書籍を発表。この本は18人の専門家によって制作されたが、そのうち16人はAMMSや他の中国軍の研究機関に所属していた。そこでは、兵器としてのコロナウイルスを作るための実験技術やコロナウイルスを兵器化することの利点が論じられている。

また、米国立衛生研究所(NIH)が管理するデータベースで学術論文を調査した結果、第五研究所の研究者は、WIVの研究者と行ったものも含め、コロナウイルスについての幅広い研究を行っていたことが分かったという。

報告書はこうした事実に加え非公開情報に基づき、新型コロナが生物兵器開発の過程で流出したものである可能性があると判断した。一方で、これは米情報機関が示した見解とは食い違っている。国家情報長官室(ODNI)は昨年10月に公表した文書で、新型コロナは生物兵器として開発されたものではないと否定した上で、生物兵器説は「科学的な根拠のない主張」であり、こうした主張をする人たちは「偽情報を流布している疑いがある」と指摘した。

これに対して、共和党議員による報告書は、情報機関の調査は、利益相反の可能性がある外部専門家に大きく依存していたと批判。また、情報機関がWIVと第五研究所との関係など、重要な情報を不必要に開示せず、国民を「誤解」させたと問題視している。

11月の中間選挙の結果、共和党が来年1月から多数派を握ることになった下院の議会では、新型コロナの起源についても調査する。共和党議員らは、関連する情報の公開をするよう情報機関に引き続き圧力をかけるとしており、より詳しい情報が明らかにされることが期待される。