国境5カ国は独自に制限へ
【パリ安倍雅信】欧州連合(EU)は31日、チェコの首都プラハで2日目の外相会議を開き、2007年にロシアと結んだビザ協定を一時停止し、ロシア人がEU域内に入る条件を厳しくする方針を打ち出した。エストニアなど一部のEU加盟国がロシア人の入域の全面禁止を求めていたが、フランスやドイツなどが反対し、ビザ発給要件を厳しくすることで合意した。
2月のロシアのウクライナ侵攻以降、100万人以上のロシア人がEUに渡航している。EU・ロシア双方の空域飛行が禁止されているため、陸路でEU東側諸国から域内に入る場合が多い。ロシアと国境を接するEU加盟国は、完全な入域禁止を求めていたため、今後、EUの決定とは別に独自の入国制限を課すことが予想される。
ウクライナのクレバ外相は、今回の決定を「中途半端な措置」と批判。EUのボレル外交安全保障上級代表(外相)は、ロシアからの国境通過が大幅に増加しているため、協定を一時停止する必要があるとの認識を示した。「これは近隣諸国にとって安全保障上のリスクとなっている」と述べる一方、「ウクライナ戦争の最中に多くのロシア人が旅行している」と不快感を示した。
ボレル氏はまた、「ロシアと国境を接する国々は、ビザを持っていてもロシア人のアクセスを自由に制限できる」と述べた。今後はロシア人がビザ取得に「待たされるようになるだろう」とも述べた。
ロシアと国境を接するフィンランド、エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランドの5カ国は共同声明で、「差し迫った治安問題に対処するため」、一時的な禁止や制限を導入できるとの考えを示した。これらの国々では入国するロシア人にスパイや工作員が紛れ込んでいることを懸念している。
一方、フランスとドイツはロシア人を完全に締め出すことを得策ではないとして完全入域禁止に反対した。
ただ、ビザ発給要件の厳格化に加え、ロシアと国境を接する加盟国がロシア人の入国を拒否した場合、陸路でのEU入域が困難になり、ロシア人入域者が激減することも予想される。
さらにEU加盟国は、ウクライナのロシア占領地で発給された旅券については認めないことで合意した。



