教皇、21人の新枢機卿選出 生前退位への準備か

最年少は伊の48歳マレンゴ氏

バチカンでイースターのミサを執り行うローマ教皇フランシスコ=4月17日(UPI)

ローマ教皇フランシスコは5月29日、21人もの新たな枢機卿(すうききょう)を選出した。その背景には、自身の生前退位を含む次期コンクラーベ(教皇選出会)への準備があるのではないかとみられている。(ウィーン・小川 敏)

バチカン・ニュースによると、ローマ教皇に次ぐ高位聖職者の枢機卿の数はこれまで208人だったが、8月27日に新たに21人の枢機卿が加わり、総数は一挙に229人に膨らむ。そのうち、コンクラーベの選挙権を有する80歳未満は132人だ。

52人はヨハネ・パウロ2世によって任命され、そのうち11人はまだ有資格者だ。64人は生前退位したベネディクト16世によって任命された。そのうち38人は選挙権を有する。そして現教皇フランシスコによって選ばれた枢機卿は113人となり、83人が選挙の資格を持っている。すなわち、フランシスコ教皇が任命した枢機卿が次期コンクラーベでは最大派閥を形成する。

新しい枢機卿の中で、イタリアのジョルジョ・マレンゴ氏は1974年6月7日生まれで48歳と若い。全枢機卿の中で最年少だ。マレンゴ氏は2022年4月2日以来、モンゴルの首都ウランバートルの使徒座知牧として働いている。

枢機卿の出身地別に見ると、欧州出身は107人で最多。そのうち54人が選挙権を有している。次いで米州から60人、うち38人が選挙権を有する。第3グループはアジアで30人。20人が選挙権を持つ。残りはアフリカの27人で、選挙権を持つのは17人、オセアニアは5人で選挙権を持つのは3人だ。コンクラーベの話が出るたびに、次期教皇から初の黒人教皇が選出されるのではないか、といった憶測が流れてきたが、枢機卿の出身別データを見る限りでは、黒人教皇の誕生はまだ時期尚早だ。

次期教皇を予想する場合、枢機卿の出身者が多い最大グループが主導権を握る。通常、欧州グループだ。例外もある。前回のコンクラーベでは114人の枢機卿のうち、60人の枢機卿を抱える欧州出身者から次期教皇が選ばれると予想され、イタリアのミラノ大司教アンジェラ・スコラ枢機卿の名前が有力候補に挙がっていた。しかし、世界で最大の信者数を誇る南米教会からフランシスコ教皇が選ばれた。なお、当選には選挙権を有する枢機卿の3分の2の支持が必要だ。05年のコンクラーベではべネディクト16世は4回目の投票で、フランシスコ教皇は13年、5回目の投票でそれぞれ当選ラインをクリアした。

前回のコンクラーベ開催前の準備会議(枢機卿会議)でブエノスアイレス大司教のホルへ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿(現ローマ教皇フランシスコ)が教会の現状を厳しく批判し、「教会は病気だ」と爆弾発言をした。その発言が多くの枢機卿の心を捉え、南米教会初の教皇誕生を生み出す原動力となったと言われている。114人中、90人の枢機卿がベルゴリオ枢機卿を支持した。

世界のカトリック教会の現状は非常に深刻だ。10年から聖職者の性的虐待事件が次々と発覚し、教会の信頼は地に落ちた。同時に、バチカン銀行の不正問題がメディアに報じられるなど、バチカンは文字通り満身創痍といった状況だ。聖職者不足、信者の教会離れは加速し、運営が厳しい教会が増えている。誰が教皇に選出されても大変だ。

ベネディクト16世は78歳の時、フランシスコ教皇は76歳の時に教皇に選出されたが、27年間のヨハネ・パウロ2世の長期政権が続いた直後ということもあって、次期教皇にはショートリリーフ的な役割を期待する声が強かったことが背景にあった。コンクラーベが教会の抜本的な改革を願い、本格的教皇の誕生を願うとすれば、60歳代の若い教皇を選出する可能性も考えられる。

コンクラーベは現ローマ教皇が亡くなってから行われるが、85歳と高齢で肘痛で歩行もままならないフランシスコ教皇がベネディクト16世(在位05年5月~13年2月)に倣って生前退位する可能性は排除できない。フランシスコ教皇自身、生前退位の可能性を何度か示唆してきた。次期コンクラーベがいつ開催されてもおかしくない。フランシスコ教皇が今回、21人と大量の新しい枢機卿を選出したのは、そのための準備の可能性がある。