一体誰がこの時期に
さていよいよ本題に入る。米国の対中不信感をも膨らませた気球は、バイデン政権初となるはずだった米国務長官の北京訪問を延期させたこともあって各紙、連日大きく扱った。ただ一つ気になったのは、中国側の誰が一体、この時期に合わせ気球を飛ばしたのかという視点が欠落していることだ。
12年前の年初、中国を訪問したロバート・ゲーツ国防長官(当時)が、胡錦濤国家主席(同)と会談した際、中国軍が開発中のステルス戦闘機「殲20」の飛行試験を、同じ日の午後に実施したことの説明を求めると、胡氏はいかにも知らされていなかった反応を示している。
専門家筋は、この時、米中融和路線に動き出した胡氏をけん制したい中国人民解放軍内部の思惑があったものと分析している。今回も対米関係リセットのため戦狼外交から微笑外交へ舵(かじ)を大きく切ろうとしている習近平3期目政権へ、人民解放軍内部のけん制パワーが働いた結果ということはなかったのか、しっかりした検証が必要だろう。
白い気球に秘められた赤い野心のリアルな現実を知りたい。
(池永達夫)



