ブラジルのリオデジャネイロで、世界的な写真家、セバスチャン・サルガド氏(78)の最新作「アマゾニア」の写真展が開催されている。人類の遺産であるアマゾン熱帯雨林と、太古の昔からアマゾンと共生してきた先住民の姿を描いたモノクロの大作だ。
筆者は、8月にサンパウロのSESCミュージアムで開催されていた「アマゾニア」展を訪れた。サルガドファンの筆者は、同展に何度も通うほど魅入られ、最後にはサイン入りの写真集まで購入してしまった。
サンパウロの会場は、倉庫街を展示向けに改造したものだった。写真の素晴らしさは言うに及ばず、計算し尽くされた展示方法など、キュレーターと主催者の力量にもうならされた。
サルガド氏の写真の魅力は、モノクロが生み出す光と影の圧倒的な存在感と力強さにある。筆者は、サルガド氏とアフリカの難民取材で現場を共にしたという写真家からその時の様子を伺ったことがある。
「サルガド氏は難民と共にアフリカの大地を放浪していた。とても同じことはできない」と、徹底した現場主義に驚いたという。
サルガド氏は、ブラジルの大統領勲章を受章し、世界に名が通った文化人だ。その同氏が、高齢を押してアマゾン熱帯雨林の奥地にまで入り込み、先住民と生活を共にしながら何年もかけて作品を作り上げた。先住民のポートレートはすべて、森林奥地に簡易スタジオを設営し、撮影したものだ。
自然への畏怖と敬意に触れる「アマゾニア展」。日本で開かれることがあれば、ぜひとも足を運んでほしい。(S)



