左派ルラ元大統領がリード ブラジル大統領選開始

ブラジルのボルソナロ大統領(左)とルラ元大統領(AFP時事)

【サンパウロ綾村悟】ブラジルで10月2日に投開票される大統領選挙が16日、公式に開始された。15日、立候補届が締め切られ、現職で保守のボルソナロ大統領、左派のルラ元大統領ら12人が出馬した。

世論調査会社「IPEC」は15日、最新の世論調査結果を発表。ルラ氏の支持率44%に対してボルソナロ氏は32%と、12ポイントの差があることが分かった。3位の中道左派ゴメス氏は6%にとどまっており、実質的にルラ氏とボルソナロ氏による革新と保守の一騎打ちとなっている。

上位2人による決選投票のシナリオの問いに対しては、ルラ氏の支持率51%に対して、ボルソナロ氏は36%と、こちらもルラ氏有利の調査結果となっている。

中南米では、数年前より「左傾化の波」による左派政権樹立が相次いでおり、コロナ禍やウクライナ戦争による貧富の差拡大、インフレによる食糧・燃料費の高騰などが、その傾向に拍車を掛けている。南米12カ国のうち、8カ国が左派政権となっており、南米最大の経済大国でもあるブラジルで左派政権が誕生した場合、米国の南米における影響力低下が避けられない。

また、貿易面でも、南米諸国では中国が最大貿易相手国の座を米国から次々と奪っており、中国寄りとして知られたルラ元大統領の当選が与える影響は経済の対中依存に拍車を掛けるとみられる。

今月8日に発表された別の世論調査では、ルラ氏とボルソナロ氏の支持率差は7%まで縮まっていた。ボルソナロ大統領の支持者からは、「反ボルソナロが多いメディアが発表する数字は信用できない」「米大統領選挙も世論調査は常にトランプ氏に不利だった」などの声も上がり始めている。

一方、ルラ元大統領の支持者や反ボルソナロ派からは、「ボルソナロ大統領は、電子投票の不備を指摘して落選を認めないつもりだ」「軍事クーデターの可能性がある」などと警戒論も広がっており、保守と革新の衝突が社会不安の要素となりつつある。