
フィリピンの入管施設に収容されている「ルフィ」を名乗る日本人容疑者が、日本国内で相次ぐ強盗事件の指示を出していたとされる問題で、在フィリピン日本国大使館がフィリピン当局に正式に強制送還を要請した。フィリピン政府は8日に控えるマルコス大統領の訪日を前に強制送還を実現する方針だが、容疑者によるでっち上げ訴訟により難航する可能性も出てきた。(マニラ・福島純一)
日本で逮捕状が出ている4人は現在、マニラ首都圏タギッグ市にある入管施設のビクタン収容所に収容されており、ここから携帯電話を使って日本国内の実行犯に指示を出し強盗を繰り返していたとされている。
地元メディアによると、在フィリピン日本国大使館は1月30日、フィリピンの司法省に日本で一連の強盗事件で指示を出したとされる4人の日本人容疑者を強制送還するよう正式に要請した。4人は日本国内で起きた少なくとも14件の強盗事件に関与しているとみられている。
これを受けレムリヤ司法相は、マルコス大統領が訪日する8日の前に日本人容疑者4人の強制送還を実現したい考えを示した。しかし、4人のうち2人に関しては強制送還の見通しが立っているが、ほかの2人についてはフィリピン国内で訴訟問題を抱えているため、まずはこれを解決する必要があるという。
「ルフィ」とみられる渡辺優樹容疑者に関しては、フィリピン国内で女性と児童に対する暴力防止法違反で複数の訴訟を起こされている身となっており、これらがすべて棄却されるか、有罪となって刑期を終えないと出国は許可されない。
この一連の訴訟に関してレムリヤ氏は地元メディアに対し、強制送還を阻止するための「でっち上げ」との見方を示した。その根拠として、訴訟を起こしたはずのガールフレンドが容疑者に会うため定期的に施設に面会に来ており、キスする様子が目撃されていたという。逮捕された外国人の間では強制送還を避ける手段として、自作自演で訴訟を起こすケースは珍しくなく、中には引き延ばしのテクニックとして駆使する悪質な弁護士もいるという。
実際、渡辺容疑者は2021年に別件で逮捕され、すでに強制送還が命じられていたが、訴訟により入管施設にとどまり続けていた。そしてその間に「ルフィ」を名乗って日本に指示を出し、一連の強盗事件に関与していたということになる。
入管によると施設には17人の日本人が収容されている。しかし、誰が「ルフィ」で何人が強盗事件に関与しているのかは把握していないと指摘している。
また、レムリヤ氏は今回の問題を受け、入管施設に収容されている日本人を含む多数の外国人から携帯電話を没収したことを明らかにした。「ルフィ」一味とみられる日本人の1人は、6台もの携帯電話を所持していたことも分かっている。施設内での通信機器の使用は弁護士や家族との連絡目的で容認されていたが、収容所への携帯電話の持ち込みは原則的に禁止ということになっている。
没収された携帯電話に関しては、一連の強盗事件の指示に使用されたかどうか、日本の警察が分析したいという場合には協力を申し出た。また、なぜ施設内で外国人が携帯電話の所持を許されていたのか調査をする方針だ。フィリピンの入管施設では、以前より、賄賂を支払うことで個室などの特別待遇や、携帯電話の使用を認めるなどの汚職が横行しているとの指摘が外国人からあった。今回の日本人容疑者の扱いをめぐり、改めて入管の腐敗が浮き彫りとなった形だ。



