
フィリピンに再び強い勢力の台風22号(フィリピン名パエン)が上陸し、死者120人を超える甚大な被害をもたらした。聖週間の連休中に到来した台風により交通機関が麻痺(まひ)し、各地で大勢の帰省客が足止めされるなどの混乱も広がった。日本をはじめとする世界各国が支援を表明している。(マニラ・福島純一)
9月末に台風16号による大きな被害を受けたばかりだが、台風22号は10月29日にルソン島南部の南カマリネス州に上陸し、そのままルソン島を横断する形でマニラ首都圏にも接近した。これによりマニラ首都圏とその近郊は激しい雨に見舞われ、各地で洪水が発生し、多くの住民が避難を強いられた。
政府の発表によると、台風22号による死者は2日時点で121人に達し、36人が行方不明となっている。負傷者も100人を超えた。特に被害が大きかったのがミンダナオ島のバンサモロイスラム自治地域で、大規模な地滑りや洪水により総死者数の約半数を占める61人の死者が確認された。台風の影響を受けた被災者は300万人を超え、100万人近くが家を失うなどして避難生活を強いられた。
国家災害リスク削減委員会によると、農作物への被害は約12億ペソ、インフラへの損害も約9億ペソに達している。
マルコス大統領は今回の台風で特に大きな被害を受けたカラバルソン地方、ビコール地方、西部ビサヤ地方、バンサモロ・イスラム自治区で災害状態を宣言し、救援や復旧活動を迅速に実施する方針を示した。またこれらの被災地における食料品や燃料などが不当に値上げされないよう、価格を60日間凍結するよう命じた。
フィリピンでは10月29日から日本のお盆に当たる万聖節(11月1日)の連休が始まったが、台風が地方に向かう帰省客たちを直撃する形になり、交通機関が麻痺するなど各地で大きな混乱に見舞われた。
マニラ首都圏にあるニノイ・アキノ国際空港では台風の接近にともない約100便が欠航となり、連休を利用して旅行に向かう数千人の乗客が足止めされた。船舶も運行が停止され中部ビサヤ地方では、フェリーが座礁するなどして約2000人が各地の港で足止めされた。
このような甚大を被害を受け、日本をはじめとする国際社会が支援を表明している。日本の林芳正外相は31日に「この度の台風がミンダナオ島中北部をはじめとするフィリピンの広い範囲にもたらした被害につき、フィリピン政府およびフィリピン国民に対して、謹んでお見舞い申し上げます」との声明を発表し、被災者に最大限の支援を行う用意があることを明らかにした。また米国や中国、オーストラリアも支援を表明し、被災地に食料品などの物資を送る方針を示している。
前回の台風16号による被災直後にF1グランプリ観戦のためにシンガポールを訪問し物議を醸したマルコス氏だが、今回も論議を呼ぶことになった。閣僚らによる災害対策会議に直接顔を出さずオンラインで参加したところ、ネット上では「台風を避け日本で休暇を楽しんでいる」との噂(うわさ)が広がり、ツイッターで「#NasaanAngPangulo(大統領はどこ?)」が注目のトレンドに急浮上したのだ。
その後、31日に被災地であるカビテ州を視察に訪れたマルコス氏は、この噂を皮肉り「ウェルカム・トゥー・ホッカイドー(北海道へようこそ)」とメディアの前で笑顔を交えて発言。しかしこの時点で100人以上の犠牲者が判明しており、今度はネット上で「不謹慎なジョーク」と批判されることになった。万聖節のため31日を特別休日としたマルコス氏だが、連休も被災で台無しになり、世論の逆風も台風並みかもしれない。



