【上昇気流】(2023年5月4日)

東京・北とぴあの「カナリアホール」(北とぴあサイトより)

日本オペレッタ協会の創立者で演出家の寺崎裕則さんが先月7日、老衰のため永眠した。89歳。同協会からお別れの会「寺崎オペレッタはハッピーエンドがお約束」の案内をいただいた。

今月31日、東京・北とぴあの「カナリアホール」で開かれるそうで、ミニコンサートと恒例のパーティーがある。寺崎さんは文学座を経て、作家の三島由紀夫と浪曼劇場を創設、三島演劇を上演した。

彼の死去で解散した後は、劇作家の宇野信夫に師事し、新歌舞伎の演出に携わった。1974年から翌年かけ、旧東独で演出家フェルゼンシュタインに師事。ここからオペレッタに捧(ささ)げる人生が始まった。

77年、日本オペレッタ協会を創立。「歌・踊り・芝居」ができる「歌役者」を養成し、日本人が楽しめる音楽劇の普及を目指してきた。

93年、その功によりウィーン州とウィーン市から“金の栄誉勲章”を授与され、98年には「音楽之友社賞」と「トヨタ音楽賞」を受賞。今年3月には創立45周年を迎え、J・シュトラウス2世の「こうもり」が上演された。

その芸術的な天分は、父親譲りだったのであろう。父、寺崎武男(1883~1967)は画家で、農商務省の留学生としてイタリアに留学した。2014年に東京・久米美術館で「寺崎武男 心の故郷イタリア展」が開かれた際には資料を提供し、顕彰に尽力。「天正遣欧少年使節」の大作の前でオペレッタが披露されると、絵はドラマの場面となって輝いた。