ベトナム中部の中核都市ダナンには、東京から直行便も飛ぶようになった。
工業団地も整備され、「チャイナ+1」「タイ+1」の有力候補地として産業の振興も始まっている。
ベトナム戦争時は激戦地として名を馳(は)せたが、今ではホーチミン市、ハノイ市に次ぐ第3の経済都市として、さらにはビーチ観光都市としても急浮上中だ。
観光客を呼び込むためハン川のドラゴン橋は、午後9時、橋桁と平行に取り付けられたドラゴンが火を噴く観光スポットになっている。
新婚カップルの一番の人気スポットとなっているのが、南シナ海から昇る太陽を浴びて撮影する早朝のビーチだ。なにせ写真に鳩(はと)が写り込むように、豆をまいて呼び寄せる専用スタッフが存在する。そのメンバーはダナン市役所のれっきとした公務員だ。彼らの出勤場所はビーチ、仕事は豆まきという稼業にいろいろ思うところもあろうが、けなげに仕事に励んでいる。
なおベトナムらしさを感じるダナンの魅力は、浜に転がっている丸舟だ。
丸舟は竹で編んだお椀(わん)型の舟。一見すると、一寸法師のお椀船を連想させる。水漏れしないように牛糞(ふん)を混ぜた漆喰(しっくい)状のもので塗り固めて造っている。昔、船税がかけられていた頃、舟の形らしからぬ舟を造って税金逃れを図ったとされる。
丸舟は佐渡のたらい舟にも似ているが、それより二回り大きい。構造からして水の抵抗が大きく、遠くまで漕(こ)ぐことは難しいが、沿岸の小魚を捕る漁業や漁船に渡るための渡し舟として現役で働いている。(T)



