【上昇気流】(2023年4月27日)

韓国済州島の街並み

韓国を旅行すると印象に残る風景がある。バスから見える風景だが、一つはどこへでも行くことができる高速道路。そしてもう一つが至る所で林立する高層マンション群だ。

1980年代に高層マンションは少なく、訪れるたびに風景が変わっていくので、昔の風景の方が記憶に残っている。韓国の現代小説を読むと、経済事情の故にそこに住むことの困難さを描いた場面が多く登場する。

資本主義が進んで富裕層と貧困層とに二極分解した様子も描かれている。映画でも住環境を描いて大ヒットした「パラサイト 半地下の家族」があるが、これを超える衝撃作と言われるのが「高速道路家族」だ。

新鋭イ・サンムン監督の話題作で、日本でも公開が始まった。ホームレス一家と裕福な一家という二極分解を象徴する家族が出会うことで物語が繰り広げられていく。ユーモアとサスペンスの詰まった作品だ。

職のないギウ(チョン・イル)と3人の家族は、高速道路のサービスエリアで二度と会うことのない人に、お金を借りながら食いつないでいる。ところが別のサービスエリアで、前にお金を借りたことのある夫人に会ってしまう。

警察に通報され、ギウは連行されるが、残った妻と2人の子を夫人は引き取る。そこは裕福な古家具屋で、収入のない妻子らは新しい生活の場を得るが、ギウは彼らを取り戻そうとしてやって来る。かつて当たり前だった家族とは何か。韓国社会の深刻なテーマだ。